ネット通販の経営に役立つ情報とツールを紹介する初心者支援サイト
通常の販売価格は最大限の努力で確保した仕入価格に値入率を乗じて設定しますが、ネットショップの粗利益率は35~40%が必要とも言われ、単純に高品質=高価格とはならず、高品質+高付加価値が不可欠です。
この付加価値は有形、無形を含め、商品自体に従属するものと販売店や販売員に帰属するものが含まれ、総合的な販売力の指標となるものですが、市場価格は価格比較サイトや実店舗の店頭価格を参考にします。
サイトでの価格調査は消費者の質問や評価、感想等の口コミ情報が充実し、メーカーも注目する価格.comや、価格なび、大手通販サイトの商品ページ閲覧中に他店の価格情報を表示するShoppingFinder、Amazon商品の価格変動を見るPRICE CHECK、地域の折込みチラシを検索できる電子チラシのShufoo!、スーパーのチラシを専門とする毎日特売などがあります。
ラクーン社が運営する本格的な仕入サイトのスーパーデリバリー、仕入れ.orgなどは初心者向けの仕入サイトとしてオークションの出品などにも利用されます。オンライン上には、食材関連の仕入サイトであるネット卸.comのような分野別の商品仕入サイトも数多くあります。
商売の醍醐味である価格設定はプロでも難易度の高い判断業務の一つです。価格競争の激しい現在は単純に仕入価格+販売経費+利益の加算方式は通用せず、時や場所、消費者属性などで変動する一物百価が当然です。
初回の値入に失敗し、売れないからと安易な値下げをすることは厳に慎まなければなりません。当初価格で購入されたお客様へお店の利益を余分に負担させ、価格に不信感を持たれるので、信用失墜にも影響します。
また、根拠なき価格競争に走ると心の余裕を失い、商品の品揃えやサイトの更新、商品知識の収集、接客対応などの顧客満足を真剣に追求しなくなる懸念があります。
とにかく安い価格より、これらの属性にマッチした適合価格がネット通販の価格政策になります。代表的なコンビニ店やJRグループのキヨスクは時や場所に適合した価格設定で成功しています。合理的な価格設定の視点
値付けは販売員が自信を持ってお客様を納得させる合理的な論拠に基づく視点が必要です。この値付けには、次の視点から複合的、科学的に検討する必要があります。
- 目標とする対象顧客はだれか
- 大規模大量、中規模中量、小規模小量の生産品か、前提条件のある限定生産品か
- 採算原価(仕入)はいくらか
- 競合価格の影響はどの程度か
- 顧客目線による価値判断でいくらが妥当か
- 商品ライフサークルの現在位置はどこか
売価利益率と原価利益率
50%の利益入りだから50%の値引をしても損はないなどと思い込んでいる人がいます。これは売価利益率と原価利益率とを混同しているので要注意です。通常の場合、利益率は売価を分母にして計算します。
例えば値入率を1.5とした場合、50%の利益があると誤認することがあります。原価5,000円だと売価10,000円が売価基準利益率の50%に相当しますが、原価基準売価は7,500円なので、原価基準利益率の50%は売価基準利益率の33.3%に相当します。
なお、値入率の算式は1÷(1-予定粗利益率)なので、例えば粗利益率30%の場合は値入率を1.429にします。この値入率を仕入価格の5,000円に乗じた7,145円が売価になります。仕入価格÷(1-粗利益率)を利用し、5,000円を0.7で除する計算でも同様です。利益と価格のバランス
粗利益率が高いほど儲かると考えるのが一般的ですが、実際は粗利益率が高い商品ほどロスが多く、量的に売れない分野に属する場合が多いようです。
この分野の商品回転率は低く、仕入単価も高いので、資金に余裕がないと商品在庫が減少し、品揃え不足や品切れなどの販売機会の損失が高まります。こうなると益々売れないわけですから、資金力の乏しいお店は難易度の高い分野と言えます。
粗利益率と商品回転率とのバランスがとれた商品を取り扱うことが基本です。これを具体的に表す指標に粗利益率×商品回転率で表される交差比率があります。
交差比率の指標は一般的に高額商品や嗜好性の高い商品ほど低く、逆にスーパー、コンビニ店で売られる食品や低額の日用品ほど高くなる傾向があります。
平成15年度の中小企業経営指標による小売業平均商品回転率は10.0回、粗利益率40.4%です。小売業平均の交差比率は404%で、高回転の代表的な飲食料品小売業の指標である1,610%の4分の1程度です。
また、個別商品の売れ行き状況を観察し、交差比率を高める具体策に次のような方法があります。
- 販売価格を安くすれば量が出るものは少し値入を低めに設定する
- 販売価格を安くしても量が少ししか出ないものは少し値入を高めに設定する
- 販売価格を安くしても量がほとんど出ないものは販売方法を早急に見直しをする
年間売上高
通常は商品回転率=─────────で表します。
年間平均在庫高四半期間売上高
これを────────── の3ヶ月で計算すると、よりきめ細かい個別管理が可能です。
四半期平均在庫高この3ヶ月は春夏秋冬の季節を指しますが、一般に多くの商品は季節と相関関係があるとされています。例えば、気温、伝統行事、旬の食材、祝日等により同一商品でも売れ行きが違うことは広く知られています。
また、月次決算は月の曜日配列や祝祭日の条件が異なり、正しく比較できない場合があるので、週次決算にするお店もあります。
交差比率に商品別の売上比率を乗じた商品別利益貢献度があります。これは交差比率優先の品揃えだけでなく、売上全体に占める個別商品の売上割合も考慮します。
商品は相互に関連し、比較や相乗効果があって売れる場合があります。一部商品の突然の撤去は、その後の売上に影響しますので、注意が必要です。在庫管理の重要性
適正在庫を把握し、管理することは資金繰りと利益を左右するポイントです。商品の特性や売上状況に応じた仕入と数量の両面から統制しますが、売れ筋商品を把握し、最少の在庫リスクで、かつ、品切れの起こらない品目数と在庫数の適正化を図ります。
通常の仕入資金は季節的な要因を除き、売上金と連動するものですが、限られた予算内で品目数を多くすると1品目あたりの在庫が減少し、逆に品目数が少なくなれば、在庫数を増やすことができます。
- 在庫増加の影響
・仕入の増加はキャッシュアウトなので、資金繰りが苦しくなる
・総資産が増加するため、総資本回転率や総資本利益率が低下する
・経年や鮮度劣化に伴う在庫の価値が低下する(ロス、死蔵品の廃棄処理費の発生)- 在庫減少の影響
・在庫切れは販売機会を失う
・品揃えが少なくなるとお店の魅力も低下する
お客様に安いお店だと感じられるには、散発的な特売だけでは限界があります。お客様はインターネットを通じて価格の比較を容易にチェックできる環境にあるからです。
安いと感じていただくには、価格はお店によって異なる相対価値の対価であり、使用(利用)価値とのバランスを考えた価格決定が必要です。お客様の使用価値がお客様の思考価値より高いと感じた場合に満足します。
そのため、継続的な利益確保は消費者の購買心理に着目した心理的価格を設定し、相対的に安いと感じられる演出が必要となりますが、程度を超えると不信感に転換しますので、ご注意ください。
- おとり(撒き餌)価格(bait price)
消費者を引き寄せるために極端に低い価格を表示することで、このうち赤字で太く、大きく目立った割引価格を赤札価格と言い、冷凍食品3割引、水着半額セールなどバーゲンでの価格設定が該当します。- 端数価格(odd price)
価格の端数を98円、978円など大台に僅かに下回る価格を表示することで、消費者に割安感を訴求する。- 端数のない価格(even price)
特定商品にペア旅行券10万円のクイズ、3億円が当たる宝くじプレゼントなどの端数のない大台価格をつけることで、商品に高い価値があることをイメージさせる。- 商品の差別化
オリジナル商品の開発や類似商品の発掘で価格比較を難しくする。- 均一価格(uniform price)
均一の価格表示で、○○円均一コーナーや売価別の商品コーナーで安さを訴求する。
【例】百円、五百円、千円均一ショップの商品は全てが安いわけではありません。- 小分け、セット化
個数単位のバラ売りや重量単位の量り売り、商品の組み合わせ価格を表示するバンドルセールや消費者の選択肢がより拡がるグループ化した商品群の中から2点で20%オフ、3点で30%オフなどと表示する。- 仕入に応じて流動的な価格を表示する
仕入れが安くできた場合は理由を示し、薄利多売に努める。
【例】新商品のキャンペーンや廃番- 季節物の売価
シーズン当初は他店より安くし、安いイメージのまま、旬に入ります。
なお、衣料品の場合は25%、50%、最終的に70%Offの順で値下げすることが多いようですが、生活に不可欠な必需品でなければ、値下げによる処分は限界があり、極端な値下げはお店の信用に影響します。- 二重価格札
二つの価格の一方を二重線で消して表示する。- 価格帯を絞り込み、売価の種類を減らす
【例】900~9,000円台の7種の商品を1,000円、3,000円、5,000円台の3種に集約する。他に高級ブランド品や健康食品、化粧品などは高価格であることが高品質の保証であり、しかも日常的に使用することがステータスとなるため、名声価格として意識的に高めの価格設定をする場合があります。
また、価格の訴求より、お買い得感や人気のあるように装う代表例にマンションや宅地などの完成物件を一括分譲せず、数度の分譲時期に設定し、物件を小出しにすることで、短期間で完売し、第二期分譲に繋ぐ方法もあります。この方法は完売を強調することで、人気があることを訴求します。松竹梅の差別価格
お客様の中には、「価格は高いほうが良いに決まっている」と先入観を持つ人がいます。見栄えで高い商品を買うケースもあります。このように、価格と価値のバランスが分からなくても一定の割合で高い商品を購入する人は必ずいますし、購入後も満足しているのです。
この方法は寿司屋の品書きでお馴染みですが、まず価格を3段階用意します。松竹梅にすると、購入割合は3:5:2前後となって、客単価が引き上げられる効果があります。商品はランク付けした方が、お客様は分かりやすいし、お店側にも価格差の説明がしやすい利点があります。
ポイントは「竹」商品が「松」に比し、値ごろ感があり、「梅」に比し、お買い得感が感じられるよう、粗利益率の高い「竹」との価格差を設定することにあります。ロスリーダー
ロスリーダーは来店客数を増やすための利益を度外視し、低価格を設定した目玉商品を意味しますが、商品本来の利益を犠牲にして来店客数を増やすことで他の商品の販売を促進する手法として利用されます。
量販店は一般的に単価が安く大量販売しやすい商品を対象とし、具体的には白物商品が伝統的に多くなっています。ネットショップの場合はロスリーダーを中心に、売りたい商品を左隣りに配置するのが原則です。
利益を最大化できる売上割合は3対2と言われることがあります。これは集客目的の目玉商品の売上割合が3以上に多いと利益率が低下し、逆に収益商品の売上割合が2より多くなると集客力が落ち結果的に売上が減少するとの考え方によるものですが、ノウハウに属することなので、自店での実証が望まれます。ドロシーレーンの法則
商品別や品目別の粗利益率を消費者心理を利用した適正配分で売上の向上を図ります。消費者は特定少数商品の大幅値下げより、平均的に商品価格を引き下げた方が安いと思い込む傾向があると言う法則です。
このように全商品の価格を他店より絶対的に安くする必要はなく、相対的な安さで勝負する方法もあります。
- 全体18%の商品を安い価格にすれば、消費者の85%は全商品が安いと思う
- 全体30%の商品を安い価格にすれば、消費者の95%は全商品が安いと思う
- 全体48%の商品を安い価格にすれば、消費者の殆どは全商品が安いと思う
特にファションや流行性、季節性のあるライフサイクルが比較的短い場合は注意が必要です。この場合、見切りが利益を左右する販売価格と販売消化率及び価格弾力性の相関をチェックします。
お客様の価格と価値が均衡する値頃感のある価格である期待価格を著しく下回る値引きで赤字を増やすことも得策ではありません。価格の変動が売上に及ぼす影響度を示す価格弾力性の検証が必要です。需要の変化率 S1-S2 P1+P2
価格弾力性|α|=───────=────×─────で表します。
価格の変化率 S1+S2 P1-P2※S1=価格変更後の販売数量 S2=価格変更前の販売数量 P1=変更後価格 p2=変更前価格
【例】5,000円(仕入2,500円)で100個販売可能な商品の同額粗利益に必要な販売数
売 価 3,000 3,500 4,000 5,000 5,500 6,000 6,500 販売数 200 180 160 100 91 50 20 粗利益 100,000 180,000 240,000 250,000 273,000 175,000 80,000 必要数 500 250 167 100 84 72 63 弾力性 1.33 1.62 2.08 – 0.99 3.67 5.11 事例は5,500円の価格弾力性が1.0以下なので、価格変動による販売数は余り影響を受けません。値引きは4,000円の設定が販売数に最も大きな影響を及ぼすので、利益重視の場合は500円値上げをし、数量重視は4,000円に設定するが最も効率的です。
- 価格弾力性<1の場合
日用品や必需品等に多いこのタイプの値下げは価格が下がる比率よりも小さい比率でしか、販売個数は増加しないので、売上は減少します。値上げは価格が上がる比率よりも小さい比率でしか、販売個数が減少しないので、売上は増加します。- 価格弾力性>1の場合
奢侈品や嗜好品などに多いこのタイプの値下げは価格が下がる比率よりも大きい比率で販売個数は増加するので、売上は増加します。値上げすると価格が上がる比率よりも大きい比率で販売個数が減少するので、売上は減少します。この価格弾力性は商品の種類や人気だけでなく、社会現象や客層の購買傾向によっても影響されます。どの商品をいくら値下げすると販売数が伸びるのか、しっかり見極める必要があります。
一般に女性は家計費に占める割合の高い飲食料費や子供関連費など日常生活に必要なモノの購買選択権があり、価格の変動に敏感になりがちです。
例えば、女性を対象とした割引サービスが効果的な理由に男性に比べ女性は価格に敏感であり、換言すれば価格弾力性が大きいと考えられているからです。
一方の男性は代理購買比率が高いため、これらの反応に鈍感な面がある反面、価格に左右されにくい固定ファンになりやすい傾向があります。