ネットショップのマーケティング

元々、小売業は人のいる場所、つまり需要のある所へ行商することから始まったとされます。それから、逆に交通の便利のよい場所に定期的な市が立ち、経常的な店舗が立地した歴史的な経緯があり、人の集まる場所はモノのない所からある所、値段の高い所から低い所へと移動します。
ネットショップの場合はこの法則が顕著に現れます。一方の実店舗は地域に立地するが故に顧客吸引力の地理的限界領域である商圏が厳に存在しますので、自然環境や風土・歴史などから醸成される地域性に適合した品揃えや価格が当然視されます。
ネットショップは時間と連結する物理的な距離観念がありません。全国各地の消費者との時間的距離観念もほぼ翌日配達が可能な同距離内に存在する宅配業態の小売業として確立してます。
しかし、ネットショップと言えども画一的な全国一律のマーケティングでは通用せず、顧客ニーズにきめ細かく対応した販売戦略でのファン育成が大切です。つまり、一見のお客から一生のお客に誘導し、リピーターの確保こそが永続的な利益の源泉となるのです。
この点は個性を全面的に打ち出し、一人で全てに係わり完結する個人ショップの方が親密度が高まりやすく、有利と言えます。ここで重視すべき点はお客様がモノを買う最終決断の要因は感情であると言うことです。
安いから、或いは便利で効用があるなどの損得勘定だけでは、一見の客すら買わないこともあるのです。
このように商品以外の店主の人柄や接客、雰囲気を含め総合的な好き嫌いの感情で決まるのが商いの現実です。この感情は十人十色で、客観的判断ができないため、当初は信頼感の醸成を目標とします。
信頼感の醸成とは、総合的なショップ評価の向上を指します。この指標は価格以外の要素である注文方法、対応、納期、梱包、再利用意向の5点を重視し、安値競争は消耗を招くだけなので、価格だけではなく、総合的に顧客を満足させられなければ、ショップ運営は難しいと言えます。
特に経験の少ないネットショッピングの利用者は未知のショップに個人情報を登録するよりも、妥協できる程度の値付けがされ、規模が大きく、ひとつのサイト内でさまざまな商品を比較、検討できるYahoo!ショッピングや楽天市場、Amazonなどのサイトに魅力を感じ、しかもランキングの上位に集中する傾向があります。
このようにランキング上位のショップが注文を寡占化する実態があることから、様々な切り口からのランキング化が出現した結果、検索上位よりランキング上位を目指すことを目的とするショップも多いようです。
また、ネットショッピングの普及に伴い、家電やブランド商品を中心に実店舗で現物商品に触れ、説明を聞き、納得し、実際はスマートフォンなどから、最安値のネットショップで購入する消費者行動を表すショールーミング問題が注目されています。
一方、インターネットから事前に商品やお店に関する評価、価格の相場、詳細な情報などを収集、判断した上で、実店舗で最終確認して購入する消費者も存在しますし、逆に実店舗で購入するケースもあります。
実店舗の優れた人的接客サービスは人間関係の醸成、親密化に即効性があり、同種の現品を直接手にできる現実感は販促活動に効果的な利点がありますが、これらの具体的な対策として次のような事例が考えられます。
要はネット通販特有の利点を如何に活用し、信頼度と顧客満足度を高めることができるかと言うことです。

  • 希少商品の優先販売、新商品の先行販売、ポイント制度の導入などでリピーターを優遇する
  • 高額商品は修理やアフターサポートなどの関連サービスを充実する
  • 価格比較のしにくいオリジナル商品やプライベートブランド商品を充実する

マーケティング自体は概念なので、意義や定義については様々な解釈がありますし、すべての人が理解できるような説明はできませんが、杓子定規的に難しく考える必要もありません。
このような概念はてっとり早く、分かりやすいとされる例え話で説明するケースが一般的ですが、人それぞれ価値判断や理解力が異なるため、誤解されることも少なくありません。
販売促進活動はマーケティング活動の一部に過ぎません。要は「売れる仕組みづくり」とも言われ、自社の対象とする消費者に対し、適正な次の事項を最終消費者に提供するための一連の有機的な業務システムを構築することです。

  1. 適正な商材を(品質、供給体制、デザイン、パッケージなど)
  2. 適正な経路と(直販、卸売、代理店経由など)
  3. 適正な保管で(保存方法、配送方法、荷姿など)
  4. 適正な時期に(イベント、季節、年間行事、旬の前後時期など)
  5. 適正な数量と(小分けのパック詰め、量り売り、ケース売りなど)
  6. 適正な方法と(マスコミ広告、ネット利用の広告宣伝など)
  7. 適正な場所で(実店舗、オンラインモール、ネットショップなど)
  8. 適正な価格で(採算は合うのか、市場価格はどうか、購買意欲を刺激できるかなど)
  9. 適正な情報と組み合わせ(正確・簡潔な役立つ内容でタイムリーあるなど)
  10. 適正な消費者に提供する(客層は想定内であるか)

消費者の嗜好、特に食生活は郷土料理や地元特産食材などは地域性やお袋の味と呼ばれる家庭の味に保守性が端的に表れます。例えば、日本マクドナルドが子供客を意識する理由は9歳までにケチャップ・マヨネーズ、バター・チーズにはまった味覚は二度と味噌・醤油に戻らないと言った創業者の信念に基づくものです。
科学的にも、おいしさを自覚できるのは酸味のわかる10~15歳前後で、味覚の完成期は大人の味とされる苦味、辛味がわかる15~20歳位だと言われており、やはり味覚の正常化は10歳を過ぎたら難しいようです。
ただし、甘味嗜好の特に強い年齢層に当たる5歳位までには、使用頻度の高い和食文化の基本である味噌や醤油の塩味と旨味が認識できているので、いわゆるお袋の味として意識が刷り込まれます。
全国各地に味噌や醤油、豆腐などの小規模製造業が多く点在するのもこのような世代を継承した地元消費者の支持があればこそですが、食生活の多様化や物流の効率化に伴い、消費者離れが避けられないのが現状です。
これを販売競争が厳しく需要限界が近いと判断するか、消費者嗜好の変遷と判断し、商品の厳選や品質重視の商品開発に活路を見つけるかは、幅広い知識に基づく直観力と情報の読み方次第です。
例えば、家計調査年報によると広島市の牡蠣、ソース、麺類などの世帯購入額は全国一、牛肉も全国2位の消費量ですが、あなたが牡蠣産地へ牡蠣をレモン産地へ県産レモンの販売を決断したとき、どのようなマーケティング戦略を立案し、経営資源をどのように配分するかの解決策を考えることが実践的な演習になります。

ネットショップのマーケティングミックス

目標達成のポイントは客単価や客数を増やす次の4Pの最適な組合わせにあります。従って、売上動向の分析結果に応じた費用と手間の適切な配分が不可欠です。
集客には同じ価値観を共有するお客を確保、グループ化する努力が重要です。質の高いリピーターの確保とは、価値観の異なる多くのお客様から、価値観の偏差が少なくなるよう意識的に選抜することを言います。
この結果、顧客の均質化が進むことで、より効果的な顧客対応とマーケティングが可能となり、お店に対するロイヤルティーや顧客相互のコミュニティ意識が強化され、顧客満足度の向上に役立てることができます。

  • Product(商品)
    1. 売れる商材の確保
    2. 商材価値の差別化
    3. プラスワンのサービス提供
  • Price(価格)
    1. 粗利益率を上げる
    2. 戦略的な価格設定
    3. 支払方法の効率化
  • Promotion(販促)
    1. SEO対策の実行
    2. 広告宣伝活動(P4P、パブリシティ広告、メルマガ、多様なSNS、クチコミ情報などの活用)
  • Place(場所)
    1. ドロップシッピングやアフィリエイトの活用
    2. 新サイトの立ち上げ
    3. 仮想商店街の出店(楽天市場、Yahoo!ショッピング、その他大手ショッピングモールサイト)
  • Philosophy(哲学)
    1. 信頼感の確立(実直な経営姿勢、情報の開示提供)
    2. 販売方針の一貫性(安全、安心に対するこだわり)
    3. 事業活動を通した社会貢献(報恩・支援活動、環境に配慮した省資源経営など)

ECサイトとアクセス潜在人口

通販事業者のECサイトは先ずカタログをみて欲しい商品を注文する傾向が強いのですが、紙媒体のカタログなどを見る感覚で、ECサイトを回遊し、欲しい商品を探索、注文するお客様が増加しています。
そのため、カタログなどの掲載商品と別にECサイトのみで取り扱う商品を拡充するお店もみられます。
このように、カタログ通販の売上高を単にECに置き換えるだけでなく、地理的条件などで、お店に行けない消費者の興味や関心を引き、手狭で陳列しきれない商品の色柄、サイズの提供や新製品を提案することで、実店舗の売上を補完する新販路として活用しています。
また、ネットショッピングの特性上、他人の経験談や評価などが購入の意思決定に大きく影響を及ぼすため、サイト内に口コミ・レビューなどの閲覧機能を設けたり、ソーシャルメディアやアフィリエイト、ドロップシップなどのサイトを経由した販売が増加しています。

クリック&モルタル

90年代後半からインターネットで事業を行うドットコム企業が市場を拡大し、近年では知名度のある既存企業の市場参入も相次ぎ、新たな競争段階に突入しています。
既存企業のEC市場への参入は実店舗網や過去の継続的取引により確立した顧客の信頼を背景にインターネット上での仮想店舗現実店舗間との相乗効果を狙ったクリック&モルタル型が成果を挙げています。
広島市の地場中堅食品スーパーの中には100万世帯を商圏とし、定額制や市内電車の往復運賃並みの配達料で無料の代引き、クレジットカードの利用、しかも当日注文で配達できるネットスーパーを開設しています。
お店側が商品選別を代行するので、最大の注意を持って鮮度や品質、消費期限などをチェツクします。お店全体の信用に関わるので、最良商品を出荷するのが一般的です。消費者はこれらを気にすることなく購入できる利点があります。
お店側は実店舗での収集情報より、自動収集できる多くの情報を活用し、消費者の新規開拓や固定化、生の声情報の収集、購買動向の分析などに利用できるため、売れ筋商品の早期の把握、商品開発、定期定量商品の購買サイクルを利用したご用聞き商法などに利用できる利点があります。
これらを目的とするネット宅配事業にフジネットスーパーおまかせくんや有機・低農薬・無添加食品を訴求するらでぃっしゅぼーやがあります。
一方、これらの業態は商品の選別、仕分け、配送業務に多大な手間とノウハウ、費用が発生するので、躊躇する企業も少なくありませんが、エブリディ・ドット・コムのような導入支援企業もあります。

通販の利用者

EC市場はブロードバンド環境の進展に伴い飛躍的に増大した一面もありますが、利用者が薄く散在しているところより、実店舗で体験しやすく、購買頻度の高い、翌日配達可能な物流体制の充実した地域に絞るケースもあります。
通販利用者の増加は関東(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)、東海(愛知県・静岡県)、近畿(大阪府・兵庫県・京都府)、九州(福岡県など)の各大都市消費者の購買動向にも影響を及ぼし始めています。
これらの大都市は商業施設が集積し、交通の利便性がよく、商品も豊富であるにもかかわらず、選択に迷うほどの品揃えと回遊疲れ、余暇活動の多様化や仕事の多忙化などの理由で時間の余裕がなく、ショッピング自体を楽しめない人が増加しているからです。
一因として、高齢者も多くなり、車や交通機関を利用し、商店街や広大な大規模店を歩き回らざるをえず、しかも休日の大都市は駐車場の入出も困難で駐車料金や時間、手間が余分にかかることから、地域拠点集中型から周辺地域散在型へ消費者の流れに変化が生じています。
逆に、わざわざ地方都市から頻繁に東京、大阪、福岡などの大都市へ買物に出かける人もいます。地方都市にも、裕福でこだわりを持つ消費者は多く、未販商品やサービスが多いことから、膨大かつ最新の商品や多彩なサービスが充実し、情報の発信拠点である東京は格別の魅力があるようです。
このような情報の一方的な地方への下流方向に対し、全国の各県のみならず自治体の一部は単独で都内に県産品や観光の情報を上流に押し上げる拠点としてアンテナショップを展開しています。
また、新製品や売れ筋商品のチェックは広告媒体資料・マーケティング資料のポータルサイトであるメディアレーダーのレポートを利用した市場動向分析などが参考になります。


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