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農商工連携の他にも農林水産省所管の6次産業化法に基づく、農林漁業者が地域資源の生産、加工、販売を一体化し、新たな販路拡大を図る6次産業の総合化事業計画に認定されると、各種支援を受けられますが、これらの取組事例も商材の参考になります。
なお、広島6次産業化サポートセンターや国民政策金融公庫の農林水産事業でも農林漁業に関する各種レポート、食品産業動向調査など各分野の最新技術情報を紹介する他、相談内容によっては6次産業化プランナーやボランタリープランナーを希望する農林水産事業者へ派遣することもあります。
農林水産省は食品事業者の意欲的な取組の活性化を通じて消費者の「食」に対する信頼を向上させるため、食品事業者や関連事業者と「協働」で活動するプロジェクトのFCPを立ち上げ、成果物である「協働の着眼点」の活用ツールを公開しています。
比較 6次産業化法 農商工等連携促進法 目的 農林漁業者等による事業の多角化及び高度化、新たな事業の創出等に関する施策を総合的に推進することにより、農林漁業者等の振興、農山漁村その他の地域の活性化等を図るとともに、食料自給率の向上等に寄与する。 中小企業者と農林漁業者とが有機的に連携し、それぞれの経営資源を有効に活用して行う事業活動を促進することにより、中小企業の経営の向上及び農林漁業経営の改善を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与する。 実施主体 (総合化事業計画)
■農林漁業者等
加工・流通業者等を「促進事業者」として位置付けることも可能(農商工等連携事業計画)
■中小企業者と農林漁業者が連携支援措置 加工又は販売を行う農林漁業者等を支援
①農業改良資金融通法等の特例
②農地法の特例(農地転用手続きの簡素化)
③野菜生産出荷安定法の特例の措置農林漁業者及び中小企業者を支援
①日本政策金融公庫による低利融資
②中小企業信用保険法の特例
③農業改良資金融通法等の特例等の措置さらに、各都道府県は国が定める基本方針を踏まえ、地域経済の活性化の観点から指定する地域資源に加え、地域産業資源を活用した新たなビジネスを創業する際の参考となるよう、売れるものづくりのためのチェックシートを作成しています。
商材化は発想の大きな転換が不可欠です。本来の特質や機能に着目し、切り口を鮮明にした差別化は魅力ある商材です。エコロジーや環境保護をテーマにしたり、自然や無添加をキーワードにした商品がマスコミの注目を浴びる傾向があります。
具体的には、需要が少ない分野での市場占有率を高めることが目標になります。特に農産物の差別化は鎌倉野菜のように供給の時差、質差、量差、種差がブランドと一体化した地域生産農家の組織化と計画生産が不可欠です。バイオテクノロジーの進化による品質改良や新種開発の増加、ハーブなどのユニークな餌を与えた畜産品や水産品、伝統野菜品種の再評価、具体的な効能は表現できないものの生活習慣病や癌、認知症の予防に役立つ機能性農林水産物の生産、輸入品種の国内生産などによる差別化も有力視されていますが、消費者の選択基準は安い、簡単、便利、綺麗、美味しいの5点がポイントになります。
日本政策金融公庫が実施した健康増進農産物に関する消費者動向調査によれば、健康成分含む農産物やその加工食品は約6割の消費者が「食べたい」と回答し、約7割の消費者は割高でも購入したいと思っていますし、6次産業化に関する調査結果では、農業者の6割、商工業者の7割が売上増加に結びついているほか、農業者、商工業者の約半数が輸出に意欲を示す結果となっています。
また、農林水産物その物を商材とする他に素材を干す、蒸す、茹でる、焼く、燻すなどの工程を処理する一次加工分野や複数の素材に添加物を加えて熱や圧力で処理したり、より高度な加工技術を要する微粉末化、乾燥化などの二次加工分野への進出で自社の保有する経営資源に応じた付加価値と差別化を高める方法です。
例えば、鳥取県日野町の建設業者が事業縮退対策として進出したホンモロコの養殖はコンニャクと温泉で有名な湯来町や三次市で休耕田を活用した養殖事業を推進しています。従来の地域資源と併せた相乗効果で販路の確保や知名度アップが期待できます。岡山県の美咲町などでも棚田を利用した同様の事業があり、このような市場規模の小さい分野での差別化は地域資源との協調が不可欠です。瀬戸内海で養殖される宮島ムール、市場規模が大きく、全国的な販路が見込める高鮮度、高品質の広島サーモンの他に付加価値の高いチョウザメ養殖は広島市湯来町の廣島蝶鮫、ワカサギは岡山県新見市の新見漁業協同組合などでも事業化されており、生産段階でのブランド化が競争力の源泉となることから、周到な計画と準備が必要です。
また、河内町の割高とされる米粉のパンや向原町のもち米と糀のみで醸造した甘酒など、素材や加工方法に天然、自然、手造りなどをキーワードとする環境配慮型商品も数多く存在する一方、市場規模や生産能力の面から商材化に課題のある場合が多いようです。
例えば、米マイフーズの米パン粉は添加素材に小麦由来のグルテンをこんにゃくマンナンで代替し、新技術の開発と並行した商品づくりで地産地消の推進や環境負荷の低減に貢献できる利点を訴求しています。
なお、国内最大級の国産農産物や加工食品の展示商談会に日本政策金融公庫主催の「アグリフードEXPO」がありますが、東京と大阪で毎年開催されており、販路開拓の有力な機会として利用されています。
地元産品を利用した地方活性化プロジェクトであるコラボネットワークは1次、2次、3次産業の事業者とのグループワークを活用し、行政、運営事務局などと一体となって協業化を支援する目的で人物評価と商品評価で審査するコラボグランプリを開催し、全国的な組織化を目指しています。農家レストラン
農家レストランは主に農家などが個人又は団体で地域で生産された「自家生産物」を飲食店という形態で調理・提供し、かつその地域内で運営される施設を指し、食品衛生法に基づく飲食店営業の許可が必要です。
営業日を限定した個人運営から観光地や道の駅、温泉施設などで共同運営する通年営業のレストランなど様々な業態があり、新鮮、安全、健康などのキーワードに郊外型レジャーとしても注目されています。
一方、より小規模の農家カフェと呼ばれる自家産の牛乳、アイスクリームなどの酪農品や果実を加工したジェラード、ジュース、お菓子などを提供するカフェ形式の業態もあります。
飲食業の基本はQSCAと言われますが、更に農家レストランの場合はオンリーワンのAEEにも配慮する必要があります。余談ですが、飲食店の2大経費を占める食材費と人件費の合計をFLコストと言い、飲食業界で重要な指標とされ、平均的な飲食店のFLコスト比率は55~65%と言われています。
一般的に客単価の高いレストランや料亭などの場合は食材費比率が低い反面、高度の接客サービスが必要なので、人件費比率が高くなる傾向があります。
このようにFLコスト比率が低いほど営業利益率が高くなるため、つい、食材の質を落したり、スタッフを減員しがちになりやすいのですが、 食材の質を落とさない代替食材の開発、効率的なメニューやレシピの考案、廃棄ロスの極少化、繁閑時間帯に適正なスタッフを配置するなどの工夫が必要です。
体験した小笠原村父島の森の喫茶店は事業と言えない規模ながら特産のパッションフルーツや島レモンをメニューに自然を利用した地形やハイビスカスの自生した庭園、二見湾を展望できる見晴らしのよい借景を活用した露天喫茶店として人気があります。
農家レストランではありませんが、リトルティポットや昔のライフスタイルを体験できるむす日のような古民家を改装し、子供と一緒に遊べるユニークな農家風カフェの業態があります。平日の幼児連れのママ友達を対象としたカフェで地元の食材を利用したランチも提供しています。
このような道路事情のよい郊外にある親子カフェの魅力はフレンドリーな接客応対に加え、見知らぬ同士の自然発生的な子育て談義や田舎の実家に帰ったような、落ち着いた雰囲気が心地よく感じるようです。
さらに、県内でも農業体験のできる例えば三次市観光公式サイトで紹介されている農家民宿、古民家を活用した田舎の宿や酪農家民宿、県内は数軒程度と少ないながら、瀬戸内海の島々に見られる体験民泊えたじまグループのように修学旅行や一般家族を対象とした漁家民宿へと転じた新業態は国土の65%前後を占める中山間地域の活性化を目的とした働き場所の提供や農林水産業の体験型啓蒙活動を通じ、定住・交流促進策として注目を浴びています。
本来、このような農林漁家民宿は旅館業法の規制を受けますが、宿泊者数が10人未満の施設の場合、客室の延床面積は3.3㎡に宿泊者数を乗じた面積以上と改正され、フロントの設置も不要となりました。つまり、最低20畳1部屋など客室延床面積が100㎡未満であれば、「簡易宿所」の営業許可の取得が可能であり、建築基準法や旅行業法、道路運送法等の規制緩和が適用されます。
広島市では、宿泊料を受けて年間180日を超えない範囲で人を宿泊させる「住宅宿泊事業法に基づく届出」の必要な民泊サービスの提供についての情報や届出申請の手順などをホームページで公開しています。
なお、農林水産省から委託され作成した農家民宿開業運営の手引きや6次産業化による農業・農村の活性化手引き書、国内宿泊施設の利用に関する消費者意識と旅館業の経営実態調査を参考までにご覧ください。
また、宿泊者に提供する地産食材は限られるため、旬と鮮度を活かしたものや伝承された料理方法、味付けの郷土料理が一般的ですが、リピーターの確保には、少なくとも体験プログラムの工夫と春夏秋冬別のメインメニューのレシピ開発が不可欠です。農家によっては、西欧野菜が主材の料理を提供するケースもあります。
一方、地元農家から少品種多量の地場野菜を旬頃に固定価格で買取り、通販サイトや量販店へ直接卸す形態の漂流岡山は量販店の地場野菜コーナーや既存直販所の多品種少量の品揃えに逆行するものですが、厳選、大量、安定、旬のキーワードで売れる量から売る量を目標とする積極的な営業活動を展開するマーケティング手法が注目されています。農家レストランの課題
- 基本的に交通の便が悪く、特に平日での集客に難がある。
- 自家産にこだわると食材の種類、量、品質の通年確保が困難である。
- 競争が激化すると、料理と人柄が差別化の訴求ポイントになる。
- 地域農家から食材などの供給に協力を得られる体制が不可欠である。
単独経営のレストランは通年営業で人件費を考えれば採算に合わず、自家生産物や付加価値を高めた加工品などを販売するための集客やマスコミ、口コミ向けの話題づくりを主目的とします。
従って、農作業に負担がかからない営業日数や特定の収穫期間に制限するなど、家族や縁者の協力を得られる範囲内に留めることが重要です。集客より来店者の固定客化を最優先と考え、家族ぐるみでの「おもてなし」の心やハレの環境をどう具現するかが成功のポイントになります。
例えば、昼食タイムのお客様は注文し、準備中だと理解していても自己の感覚的な時間を超えるとイライラ感が増し、不満を感じるものなので、洗練された接客技術や気配りはレストラン経営に不可欠です。食事に来た人か、食事を楽しみに来た人なのかを考慮し、友人やお世話になった人を招待する心構えで運営します。
料理メニューに自信があれば、人手や接客対応を省力化できるセルフサービスのバイキング形式を、不安があれば、メニューを絞った日替わりランチや簡単なバーベキュー、ダッチオーブンなどを利用した本格的なアウトドア料理でも喜ばれるものです。
また、万全のサービスや食材、作業時間のロスを抑えるため、サイトページやFacebook、Twitter、ブログなどのSNSに24時間対応の予約システムを導入することも効果的です。
飲食店限定ながらYahoo!検索、Yahooロコ、スマホ専用のプッシュ通知に対応した無料のyoyakutは簡単に設置できるツールとして集客効果が期待できます。
更に食事の時間帯以外での集客や家族、地区ぐるみでの対策も必要です。一般的な野菜や二次加工品の直販だけでは魅力や差別化に欠けます。女性や子供にアピールできる特徴あるスイーツの開発が効果的です。
もう一つ、支払い方法にクレジットカードを利用できるかどうかも重要な点です。販売の機会はレストランや売店だけではありません。地区や業界単位でイベントや産直市場などに出店することもあります。
ネット通販の場合はレンタルサーバー事業者のクレジット決済代行サービスを利用することができますが、実店舗の場合は審査があり、加入は容易ではありません。このような場合はタブレット端末のiphon、ipadやAndoroidをPOSレジとして利用し、クレジットカードや電子マネーに対応するsquareリーダーがあります。
また、手数料は業種、売上規模を問わず均一の3.25%のみで、売上金は登録口座へ振り込まれ、しかも初期導入費用、月額固定費用、銀行振込手数料などの追加料金は不要です。
同様のサービスに例えばPayPalや楽天ペイなどがあります。クレジットカードは現金管理の省力化、お客様サービスの一環としての利点に加え、客単価が増加する傾向があるとされています。広島県内の農家レストラン事例
- 世羅郡世羅西町の「せらにし恋し」(未訪問)
バイキング形式の麹を使用した野菜料理とドブロク醸造が特徴の土日曜営業の予約制レストラン
- 竹原市吉名のおばあちゃんの田舎料理「農家レストラン西野」
土・日はバイキング形式の自家野菜と特産のジャガイモ料理が特徴の築100年超の古民家レストラン
- 東広島市福富町の「しゃくなげ館」
地産の野菜、エゴマ、古代米などの食材を利用した惣菜と郷土料理
- 東広島市福富町の「カントリーグレイン」
ベーカリーショップに併設した地産の食材と天然酵母パンを使用する自然派洋食レストラン
- 東広島市福富町の「上ノ原牧場のチェルカドーレ」」
牧場に隣接し、自家製の乳製品とブランド肉の峠下牛、幻霜豚などに特徴のある酪農家レストラン
- 東広島市河内町の「宇山そば処 さわやか茶屋」
廃校した小学校を活用して運営する独自品種そば、地産野菜に特徴のある惣菜と郷土料理店
- 安芸高田市吉田町の「えーのー夢茶屋」
農事組合法人えーのーの生産する野菜、コシヒカリ、大豆を加工した豆腐料理が特徴
- 安芸高田市高宮町の「エコミュージアム川根」
宿泊設備があるので地産の野菜、山菜、川魚を使用した郷土料理の調理レベルは高い
- 三次市布野町の「道の駅ゆめらんど布野のふるさと惣菜バイキング」
地産の食材を使用したバイキング形式の健康的な惣菜と郷土料理が特徴
- 北広島町大朝の「天意の里ハーブガーデン」
自家栽培のハーブを使用したランチ、うどん、ハーブティーなどを提供する軽食レストラン
- 江田島市の「海辺の新鮮市場」
地元で水揚げされた海産物を調理した昼定食をセルフサービスで提供する漁家レストランですが、この他、季節限定で運営される広島の新風物詩「かき小屋」も漁家レストランと言えます。
- 江田島市の「江田島オリーブファクトリー」
広島県産オリーブの栽培・収穫・加工から、売店・レストランまでを6次産業化した複合施設