統計分析ツール

事業計画に必要な各種数値の算出は次のようなツール例があります。特に売上予測は重要な指標として算出根拠を問われますので、需要予測と併せた検討が必要です。

  • 回帰分析
    説明変数と目的変数の関係モデルを推定する統計手法で予測値の算出に利用されます。実測値と予測値の差(残差)の自乗和が最小となる最小自(二)乗法で回帰係数を求めます。なお、説明変数が2個以上ある場合を重回帰分析と言います。
  • 移動平均法
    実績売上の移動平均を算出して将来予測する手法で株価推移の分析に広く利用されます。移動平均法は平均値の算出期間を徐々にずらす季節調整に欠かせない方法です。
  • 季節変動指数
    過去の月別売上推移を見ると、月々の変動パターンは毎年同じ傾向となることが分ります。この月別変動を指数化したものが季節変動指数で、毎月の販売計画や仕入計画に活用できます。また、開業当初の月別売上計画は家計調査年報の月別消費パターンから求めることもできます。
  • 単純指数平滑法
    需要予測は最小二乗法や移動平均法などが利用されますが、これらは過去の長期間の実績値を必要とします。それに対し、指数平滑法は前期の予測値と実績値のデータがあれば、今期の予測値が簡単に求められるのが特徴で、短期予測に適します。今期の売上予測=a×前期実績+(1-a)×前期予測

    今期売上予測のシュミレーション
    前期実績 万円 前期予測 万円
    平滑係数(a) 0以上1未満の数値 今期売上予測 万円

    aを平滑係数と言い、過去データから最適値を求めます。直前の傾向を重視する場合はaを1に近づけ、過去傾向を重視する場合は0に近づけます。

  • パレート分析(ABC分析)
    イタリアの経済学者パレートが提唱した所得分布の経験法則です。2:8の法則と言われ、全体の2割程度の高額所得者が社会全体所得の8割を占めるという法則です。応用例は全商品(全顧客)の20%が全売上の80%を占めると言われます。
    関連する法則にZipfの法則があります。これはサイズがk番目に大きい要素が全体に占める割合の1/kに比例する経験則です。サイズ順に順位(k)を付けた場合、k番目のサイズは1番目のサイズの1/kになると言うものです。
    元々、英単語の使用頻度とその順位に関する法則性ですが、社会現象や自然界にも広くみられる事象で、検索キーワードの順位と検索頻度を法則に基づき予想出現回数と実際出現回数とを回帰分析すると高い相関係数を示す事例があるようです。
  • 箱ヒゲ図(簡易版)
    株価チャート図に類似し、複数グループや変数間の分布比較を簡単に視覚化します。比較対象数が多ければ、分布の多峰性の解るヒストグラムよりも便利で箱やヒゲの形状で分布の歪みを把握します。通常は箱の中心点に中央値を割り当て、箱の底辺に25%点と上辺に75%点、ヒゲの上方に最大値と下方に最小値の四分位点を割り当てます。
  • ポワソン分布
    ポアソン分布とは、離散分布の一例であり、起こり得る確率が非常に小さい現象の回数を長期間観測するときの分布を指し、代表例に交通事故や欠品の発生頻度などがあります。イベント発生の平均値をλとする場合、ポアソン分布に従うイベント数がK回である確率はPOISSON(k,λ, 0)で計算できますが、直接計算するExcel関数があります。

お奨めの統計WEBはExcelでデータ分析を行うための処理ツールや知識、アイデアを紹介していますが、データの相関関係と因果関係との十分な見極めが重要です。

統計利用の留意点

人の心理的特性

“人は自分が信じたいと思うことを信じる”心理的な特性があり、客観的に見て明らかに間違った情報でもこれを信じると言われます。換言すれば、”人は自己中心的な都合で情報を選別する”傾向があると言うことです。
客観的な事実は第三者が等しく認知できる科学的な事実と解釈されるのに対し、個人の実体験である個人的な体験事実の方を優先する風潮があります。
個人の実際の体験である以上、一方的に否定はできませんが、この事実を広告宣伝に利用することが多々あります。特に健康、美容関連のネットショップに見受けられるのですが、実態は次のようなトリックに大部分の消費者のみならず、ネットショップ側も気づいていないのです。
例えば、痩せる効果のある健康器具を販売しているネットショップの「お客様の声」欄に数百件の感謝や御礼の投稿があったとします。利用者の生活環境や体質、意識など様々な要因が違うにせよ、これらは個人的な体験事実ですから一概に否定はできず、しかも圧倒的に多い感謝の言葉があるので、効果に肯定的な感情が生じやすいのですが、このような効果の有無は統計学的な考え方が重視されます。
効果を検証する場合は特定の環境条件下で特定の期間、特定の被験者を①「利用し、痩せた」、②「利用し、痩せなかった」の他に③「利用しなかったが、痩せた」と④「利用しなかったし、痩せもしなかった」の4グループに分類集計する作業が不可欠です。
①のデータ集計は比較的容易ですが、②は被験者の顕在化が困難で③、④は元々匿名なので集計の術がなく、例え利用者アンケートの結果90%に効果があるなどの宣伝は事実であっても該当者に効果があるかは全くの別問題です。個人の体験談は①の「利用し、痩せた」の件数を収集した主観的な事実で統計学的に証明できない以上、いくら集積しても論理に基づく科学的な事実である客観的な事実に転換できないのです。

情報の真実と事実の差異

情報には、全て情報元が正しければの前提条件と背景となる環境があればと言う環境条件があります。通常はネタも二次、三次の情報元になると微妙な意味合いを含めた内容は正確性に欠けるものです。話の内容が次々と人に伝播すると、元の内容は簡略、脚色され全くの別物になる伝言ゲームがあります。
人を介した情報は必ず、意図するしないを問わず、その人の立場や知識、経験に基づく理解力の違いからバイアス化は避けられません。
また、被写体の配置や表情で事件の重大さを印象付けることはマスコミの腕の見せ所とも言われますし、実況中継のテレビでさえ、カメラの映す方向しか見えないのです。このように真実は一つでも事実は切り口によって幾通りもあります。この切り口を本人自ら新たに発見することは、商いのヒントやネタにもなります。
一般に動作や言葉を文字化した記事は記者と編集者の価値観や客観性に左右される場合があります。文字や数字は信用補完の心理的効果が強く、内容を傾向的に捉えても絶対視すべきではありません。マスコミの特集や諮問機関の答申、アンケートなどの各種調査も鵜呑みにしないことが大切です。
これらは、スポンサーの意に沿い、意図的に一定方向へ集約することを目的とする場合が多いからです。情報操作の一般的な手法は依頼者の意図や目的を把握し、望ましい結果を想定することから着手し、その後に意図を込めた質問を用意し、限られた選択肢を選ばせ、都合の良い統計手法で処理します。
意図の想定内は強調や誇大化するのに対し、都合の悪い部分は排除や矮小化する傾向があります。重要な点は幅広い知識や専門家の意見に基づき、情報元の信頼度や背景を考察することにあります。
例えば、情報の発信順序や発信のタイミングを変えるだけで、情報の見方が違ってくる場合があります。情報化社会においては、メディアリテラシーの能力向上が欠かせず、次のような観点から情報の意図も読み解くことが求められます。

  • 情報の発信源にかかわらず、安易に鵜呑みしないこと
  • 客観的な事実と主観的なコメントとを区別すること
  • 他の見方はないか、複数の情報源から取得すること
  • 隠れていたり、見落とされていたところはないか
  • 情報の発生と発信されたタイミングに蓋然性があるか

ところで、メラビアンの法則は営業マンの研修事例として有名ですが、この法則は情報伝達手段の内、単語によるものは7%に過ぎず、声の調子は38%、外見や表情からは55%の伝達力があるなど、非言語コミュニケーションの重要性を説明したものです。

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このような法則の利用例は視覚に訴求するパワーポイントを多用したプレゼンがあります。
見る側もよく理解できたと思い込む効果がある反面、視線の動きが大きくなるため、熱意が伝わらず、記憶に残る部分も少なく、電子紙芝居と酷評されることもあります。
説明内容や相手先の都合を考慮しない本末転倒のツールやテクニックに頼った資料づくりより、簡素化した内容を分かりやすく、要領よく、印象的に説明できるような対人会話能力や説得力の向上が重要です。
このような○○の法則などと称される中には、一部の都合のよい部分を流用したり、誤用したものが多くありますので注意が必要です。

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