食品表示制度の内容

消費者庁食品表示に関する制度は飲食料品の品質に関する表示について、製造業者等が遵守すべき基準を定めたJAS法、飲食に起因する衛生上の危害発生を防止する食品・添加物に関する基準を定めた食品衛生法、栄養の改善、国民の健康増進を図る特別用途の表示、栄養成分に関する基準を定めた健康増進法があります。

健康食品の表示制度

表示許可を得た「特定保健用食品」や「特別用途食品」などは保健機能により効能が期待できる旨を、「栄養機能食品」の場合は栄養成分の機能表示ができますが、一般に健康食品と称されるものは保健の機能や栄養成分の機能表示はできません。このような保健機能食品の範疇に入らない場合は効能や効果の直接的な表示で、法律違反とならないよう、効果を幅広く解釈できるように連想させる表現を多用しています。
例えば、根拠を示さずとも単にスッキリとか体の調子をケアとかの言葉にスタイルの良い人の画像を添えれば、「痩せる」とか「お腹の調子が良くなる」とか、「健康的になる」などと言った直接的な表現をしなくても、連想させることで同等な効果を訴求することができるわけでし、日常生活での食の乱れやストレス環境を強調し、改善しなければ思わせることも同様の効果が期待できる手法です。
なお、生活習慣病や癌、認知症などの予防に役立つ「機能性農林水産物」の具体的な効能は表現できないないので、広告フレーズに十分な注意が必要です。

  • 特定保健用食品
    身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、胃腸の調子を整えたりするのに役立つなど特定の保健の用途に資する旨を表示する食品を言いますが、国の許可制のため効果の証明実験に多額の費用を要します。
  • 特別用途食品
    病者用、妊産婦用、授乳婦用、乳児用、えん下困難者用など特別の用途に適する旨の表示をする食品を言います。
  • 栄養機能食品
    許可や届け出は必要ではありませんが、一定の栄養成分の補給のために利用される食品で栄養成分の機能を表示する食品を言います。
  • 機能性表示食品
    主にサプリメント・加工食品・生鮮食品を対象に消費者の誤認を招かず、自主的かつ合理的な商品選択に役立つ食品表示制度で、機能性農林水産物の普及拡大が期待されます。
    疾病の治療・予防を暗示するような表現や健康の維持・増進の範囲を超える表現は認められませんが、科学的根拠や安全性・効果などの情報公開を示して届け出れば、手続きが簡単でより幅広く体の特定部分に効果のある旨を表示できます。ただし、包装には国の審査を受けていない旨を記載するので、届出表示欄の注意書きが必要です。企業はガイドラインに従い、機能性の表示内容とその科学的根拠、安全性の証明などの製品情報を消費者庁に届け出ることで、サイトに公開されます。

なお、医薬品の承認を受けていない食品などの効能効果等を表示することは「薬事法」、公正な競争を又は一般消費者の利益を害するおそれがあると認められる表示の場合は「不当景品類及び不当表示防止法」により禁止されています。

製造所固有記号の表示

食品衛生法に基づく表示基準は原則として「製造所の所在地」及び「製造者の氏名(法人名)」の表示を義務づけています。法に基づき販売用に提供する食品又は添加物については、表示面積の制約等の理由から予め消費者庁食品表示課に届け出た製造所固有記号の記載による例外的な表示方法が認められています。

  1. 自社工場(製造所)が多いが、表示には本社の名称、所在地を記載する場合
  2. 製造を他社工場(製造所)に委託している販売者が自社の名称、所在地を表示する場合

製造所固有記号は1工場に1記号が原則ですが、販売者が異なる場合は1販売者1製造者毎に1つの記号が認められます。対象となる食品等は清涼飲料水や一部の加工食品など14種に分類され、鮮魚介類、生鮮野菜などは利用できません。
また、固有記号は個別事業所が独自に作成し、膨大な件数が消費者庁に届け出るため、特にPB商品の場合は製造所が消費者に分からない欠点や利点があります。
ただし、製造者や製造所在地のお問い合わせがあった場合は遅滞なく返答できる対応が必要ですので、多い場合はネット上に掲載することも必要でしょう。(カルビー社)

JAS法の概要

農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の略称であるJAS法は食品表示の充実と強化、有機食品の検査認証と表示制度、JAS規格制度の見直し等を平成11年7月に改正し、すべての飲食料品の品質に関する表示について、製造業者などが遵守すべき基準を定めています。
これらの基準は飲食料品などが一定の品質や特別な生産方法で作られたことを保証する「JAS規格制度」、原材料や原産地など品質に関する一定の表示を義務付ける「品質表示基準制度」があります。

JAS規格制度の内容

農水大臣が制定した日本農林規格に合格した製品にJASマークの貼付を認める制度です。JAS規格で定められた品目を認定製造業者等が規格に適合しているとの確認を格付と言い、格付を受けた製品はJASマークを貼付することができます。
ただし、この格付を受けるかどうかは製造業者等の任意によります。

農林水産大臣が農林物資の種類(品目)を指定して制定する

JAS法対象の農林物資とは酒類、医薬品、医薬部外品、化粧品等を除く次のものをいう

  1. 飲食料品及び油脂
  2. 農産物、林産物、畜産物及び水産物並びにこれらを原料又は材料として製造し、又は加工した物資

JAS規格の基準

  1. 品位、成分、性能その他の品質についての基準(果実飲料、醤油、ドレッシング、合板、畳表など)
  2. 生産方法についての基準(熟成ハム、地鶏肉、有機農産物、生産情報公開牛肉など)
  3. 流通の方法についての基準

JASマークの登録認定機関

認定機関の登録は行政の裁量余地を排除するため、登録基準にISO/IECガイド65などが定められています。
この機関に対する国の関与を事後監視型にするため、業務規程や認定手数料は届出制で、登録後は農水大臣の登録基準適合命令及び業務改善命令があります。

JASマークを貼付できる者の範囲

製造業者等に加え、製造工程を管理し、且つ、製品がJAS規格に適合するかどうかの検査を行う能力を有する販売業者又は輸出入業者も登録認定機関の認定を受けて、JASマークを貼付できます。

JASマークの種類

  1. JASマーク
    品位、成分、性能等の品質にJAS規格を満たす食品や林産物などに付されます。
  2. 有機JASマーク(有機農産物、有機畜産物、有機加工食品)
    有機JAS規格を満たす農産物などに付されます。
  3. 特定JASマーク
    特別な生産や製造方法、特色のある原材料JAS規格を満たす食品に付されます。
  4. 生産情報公表JASマーク(牛肉、豚肉、農産物、豆腐、こんにゃく)
    生産情報公表JAS規格を満たす方法により、給餌や動物用医薬品の投与などの情報が公表されている牛肉や豚肉、原材料や製造過程等の情報が公表されている加工食品等に付されます。

品質表示基準制度の内容

この制度は消費者庁が所管する品質表示基準に定めた表示を製造又は販売業者に義務付け、一般消費者向けの全ての飲食料品を対象に次の品質表示基準を定めています。
容器包装の表示可能面積が150平方cm以上の場合は8ポイント以上の活字サイズが必要で、この面積がおおむね150平方cm以下の場合、5.5ポイント以上にできます。
品質表示基準はJASマークが付いているかどうかは関係なく、農水大臣はこの基準に違反した当該販売業者に対し、その旨の公表と次の措置を講じます。

  1. 表示事項の改善指示と併せ業者名を公表し、又は遵守事項を遵守すべき旨を指示
    都道府県の区域内のみに事業所などがある場合は知事が指示します。
  2. その指示に従わない場合は指示に係る措置をとるべきことを命令
  3. その命令に違反した場合は個人は100万円以下の罰金又は1年以下の懲役

なお、従来は命令に従わない場合のみに立件できたので、不正競争防止法や刑法の詐欺罪などの適用と比べ不公平であったことから、特に悪質とされる原産地や原料の産地偽装の場合は段階を経由せずに適用される直罰規定により、個人は200万円以下の罰金又は2年以下の懲役が求刑されることがあります。

生鮮食品の表示(名称、原産地の2点)

  • 青果物は「名称」、「原産地」を表示する
    1. 国産品は都道府県名を表示する
    2. 輸入品は原産国名を表示する
  • 水産物は「名称」、「原産地」のほか、別段の「水産物品質表示基準」に基づき表示する
    1. パック詰め鮮魚
      国産品には、漁獲水域名か養殖場のある都道府県名、輸入品は原産国名を記載します。ただし、国産品で複数の水域にまたがるなど水域名表示が困難なものには、水揚げ港又はその港がある都道府県名を表示する。なお、輸入品には、原産国名に水域名が併せて記載されていることもあります。
    2. パック詰めでない鮮魚
      「名称」と国産品は漁獲水域名か養殖場のある都道府県名、輸入品は原産国名を記載する。ただし、水域名の表示が困難なものは水揚げ港又はその港がある都道府県名を表示する。
    3. 冷凍したものを解凍した場合は「解凍」と表示する。
    4. 養殖されたものは「養殖」と表示する。
  • 畜産物は食肉と卵に販売形態別の表示義務がある
    1. パック詰め食肉(内容量はキログラム又はグラムで記載)
      牛肉や豚肉等の「名称」のほか、国産品は国産である旨、輸入品には原産国名を表示しますが、国産品は主たる飼養地がある都道府県名を表示することもあります。畜産物は二ヶ所以上で飼養されている場合があり、この場合は一番長い期間飼養されていた場所を「主たる飼養地」と言います。
    2. パック詰めでない食肉
      牛肉や豚肉などの「名称」のほか、国産品は国産である旨、輸入品は原産国名を表示する。また、ロースなどの部位や焼き肉用などの用途が併せて記載されていることもあります。
    3. パック詰め卵
      鶏卵や鶉卵などの「名称」のほか、国産品は国産である旨、輸入品は原産国名を表示する。国産品は主たる養鶏場などがある都道府県名を表示することもあります。さらに、賞味期限と保存方法及び賞味期限経過後の飲食する際の注意事項などを表示する。
  • 玄米や精米は「玄米及び精米品質表示基準」に基づき「名称」、「原料玄米」、「内容量」、「精米年月日」、「販売業者等の氏名又は名称、住所及び電話番号」を定型の様式により、容器又は包装の見やすい箇所に表示する。ブレンド米の場合、原産国と使用割合に加え、ブレンド米である旨を表示します。
  • 生鮮食品を生産し、生産したその場で消費者に直接販売する場合、又は生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合は名称、原産地の表示義務はありません

加工食品の表示

名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造業者等の氏名、名称及び住所を表示し、品質表示基準は容器に入れ、又は包装された加工食品を対象にします。
業務用のみに販売されるものは対象外です。主に業務用に販売されるものも、一般消費者に販売される可能性がある場合は品質表示基準に定められた表示が必要です。

  • 産地名が加工地を示すのか、原料の産地を示すものか不明確な表示は禁止される
    輸入品は原産国名や輸入者なども表示します。これらの表示事項は容器又は包装の見やすい箇所に原則一括して表示する必要があります。
  • 食品衛生法は製造所の所在地等の表示を義務付けている
    ただし、業者名の横にアルファベット等の記号で表示された製造所固有記号を厚生労働大臣に届け出た場合、この記号を表示することもできます。
  • 生鮮食品に近い別表加工食品は平成18年10月から原料原産地表示を義務付けている
  • 原材料は食品添加物とそれ以外の原材料に区分され、原則として使用した全ての原材料を記載する
    1. アレルギー物質を含む食品が使用されている場合、その旨を記載します。
    2. 食品添加物以外の原材料は最も一般的な名称で使用重量の多い順に記載します。
  • 食品添加物は使用重量の多い順に食品衛生法に基づき、次の表示方法で記載する
    1. 物質名
    2. 用途名
      【例】甘味料(キシリトール)、着色料(クチナシ)、保存料(ソルビン酸)等
    3. 一括名
      【例】香料、酸味料、pH調整剤、乳化剤など
      また、物質名は定められた簡略名(例:塩化カルシウム→塩化Ca)や類別名(例:香辛料抽出物→香辛料、スパイス)による表示も認められます。
  • 栄養成分に関する何らかの表示を行う場合は標準的な表示が健康増進法で義務付けられますが、食品に含まれる栄養成分や熱量だけでなく、その表示が一定の栄養成分や熱量についての強調表示である場合は含有量が一定の基準を満たすことが義務付けられる
    1. 栄養成分
      蛋白質、脂質、炭水化物、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、ヨウ素、リン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、K及び葉酸などをいう。
    2. 表示すべき事項及び方法
      熱量、蛋白質、脂質、炭水化物、食塩相当量及び表示栄養成分の含有量をこの順で記載する。また、炭水化物に代わり、糖質及び食物繊維で表示されることもあります。
    3. 強調表示の基準
      食物繊維、カルシウム等について「高」「含有」などを表示する場合や熱量、脂質、コレステロールなどについて「無」「低」などと表示する場合に満たさなければならない基準ですが、脂質○%カット、食物繊維○%増量などの表示は一部の成分で比較対象の食品と25%以上の差がないと表示できません。
  • アレルギー物質を含む食品の原材料表示
    食品衛生法に基づく特定原材料を含む旨の表示義務で、特定の食物が原因でアレルギー症状やアナフィラキシーショックを起こす人が増えていることから、食品衛生法関連法令の改正でアレルギーの起こしやすい物質を原材料ごとに個別表示することになりました。

    1. 特定原材料(必ず表示する5品目)
      卵、乳、小麦、そば、落花生
    2. 特定原材料に準ずるもの(表示を勧奨する20品目)
      あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、桃、山芋、りんご、ゼラチン
    3. これらが含まれる場合は(原材料の一部に○○由来原材料が含まれます)という旨を表示する。また、極微量でも発症することから、加工食品1kgに対して数mg以上の場合も表示する。
    4. 原材料表示の方法
      個別表示は個々の原材料ごとに、アレルギー物質を書く方法です。通常、(~を含む)と表示され、どの原材料に何のアレルギー物質が含まれるかがわかります。一括表示は加工食品に使われるアレルギー物質を原材料名の最後にまとめて書く方法です。
      この場合、どの原材料にどのアレルギー物質が使われているかは不明なので、詳細は製造者や販売者等に問い合わせる必要があります。なお、同じアレルギー物質名が何度も出る場合は二度目以降を省略することもあります。
  • 飲食料品を製造若しくは加工し、消費者に直接販売する場合、又は飲食料品を設備を設けて飲食させる場合は名称、原材料などの表示義務はありません

加工食品の期限表示

  • 賞味期限(劣化が比較的遅い食品に表示)
    定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいいます。
    当該期限を越えた場合でも、これらの品質が保持されていることがあります。
    【例】スナック菓子、カップめん、レトルト食品、缶詰、ジュース、かまぼこ、牛乳、バターなど
  • 消費期限(劣化が速く、およそ5日以内に悪くなる食品に表示)
    定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗、その他品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなる懼れがないと認められる期限を示す年月日をいいます。
    【例】弁当、惣菜、生かき、生めん、調理パン(サンドイッチ)など

有機食品の表示

有機JASマークは登録認定機関から認定を受け、有機JAS規格に基づいて生産製造した有機食品に付けます。このマークがなければ、有機農産物や有機農産物加工食品は有機、オーガニックなどの表示はできません。

  • 有機農産物
    1. 種播き又は植え付け前2年以上、禁止農薬や化学肥料を使用しない田畑で生産する
    2. 遺伝子組換え由来の種苗は使用しない
    3. 原則として農薬と化学肥料を使用しないで栽培する
  • 有機畜産物
    1. 飼料は主に有機農産物を与える
    2. 野外への放牧などストレスを与えずに飼育する
    3. 抗生物質等を病気の予防目的で使用しない
    4. 遺伝子組換え技術を使用しない
  • 有機加工食品
    1. 原材料は主として有機農産物、有機畜産物、有機加工食品を使用する
    2. 加工は主として物理的、生物的方法を用い、食品添加物や薬剤の使用は避ける
    3. 薬剤により汚染されないよう管理された工場で製造する

遺伝子組換え食品の表示

遺伝子組換え食品は安全性が確認された農産物及びこれらを主な原材料とする加工食品のうち、別表に示す食品が「遺伝子組換え食品」である場合は、その旨を表示することが義務付けられます。

    • IPハンドリングされた遺伝子組換え農作物の義務表示例

原材料 大豆(遺伝子組換え)

    • IPハンドリングされていない農作物の義務表示例

原材料 大豆(遺伝子組換え不分別)

    • IPハンドリングされた非遺伝子組換え農作物の任意表示例

原材料 大豆(遺伝子組み換え不使用)
IPハンドリングとは、遺伝子組換え農作物と非遺伝子組換え農作物を生産・流通・加工の各段階で混入が起こらないよう管理し、そのことが各段階での証明書により担保されている管理システムです。
ただし、製造過程で組み込まれた遺伝子やその遺伝子が作る新たなタンパク質が技術的に検出できない場合や遺伝子組換え作物を飼料とした家畜の肉、鶏卵などの場合は表示義務がありません。
なお、加工食品はその主な原材料(全原材料に占める重量割合が上位3位までのもので、且つ原材料に占める重量割合が5%以上のもの)に表示義務があります。


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