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経費科目の名称は確定申告書に添付する決算書に記載されている科目を利用するのが一般的ですが、経費科目の設定は基本的にお店の自由なので、業種独自の科目を使用することができます。
例えば、サービス費や販売促進費、ガソリン代、レンタル料などがあります。これらの科目は決算書の科目予備欄に記載し、継続的に使用することが前提です。標準的な経費科目を一覧表にしていますので、ご参考にしてください。
売上の発生時期
通常の売上は商品の引渡し日に発生しますが、ネットショップの場合は一般的に商品を発送した日に計上されます。また、発送後に入金がある場合は売掛金勘定を発送前に入金がある場合は前受金勘定を使用します。
ただし、小売業で認められる売上の計上時期は税法上、次の例も継続的な経理処理を条件に認められます。
- 売買契約日
- 商品発送日
- 商品受取日
- 代金回収日
6/20 普通預金 売上5件30,000円
送料5件3,000円前 受 金 ←発送日前に入金あり 預 り 金 ←送料(送料込み売上の場合は不要) 6/21 前 受 金 3件20,000円 売 上 ←5件の内、3件分発送 7/10 預 り 金 佐川急便1,600円 普通預金 ←送料は月末締めの翌月10日払い 売上原価
売上総利益の算出に必要な売上原価は勘定科目でないので、次の算式で計算する必要がありますが、商品の棚卸高は取得原価で集計します。
A.期首商品棚卸高 D.売上原価 帳簿に記載される(A+B)-CのDが売上原価になります。
万引や廃棄商品は期末在庫がその分自動的に減少します。
この場合は記録する必要がありません。
ただし、自家消費は記帳を要します。B.当期仕入高 C.期末商品棚卸高 この原価には最終仕入原価法、先入先出法、先入後出法、総平均法、移動平均法、単純平均法、個別原価法、売価還元法など全部で8種類の方法が認められています。
棚卸資産の評価方法の届出がない場合は自動的に最終仕入原価法になります。つまり、同一商品については、12月31日の直近仕入価格を統一原価とみなすわけです。
個別商品原価が全て異なる中古品や美術品なども最終仕入原価法と同じ原価になりますが、類似の多品種少量の商品が多くなると在庫金額を計算するのも大変です。このような場合は売価還元原価法の選択により、売価の計算が認められます。
具体的には、原価率の類似商品をグループ別に分け、売価に原価率を乗じて期末在庫を評価します。小規模事業者の場合は業種が同一であれば、特にグループ別計算の必要はありません。なお、時価が取得原価を下回った場合にだけ時価が採用される低価法もあります。期首商品棚卸高(評価原価)+当期商品取得原価総額(当期商品純仕入高)
原価率=──────────────────────────────────
当期商品販売価額純額(当期純売上高)+期末商品棚卸高(売価)このように多くの計算方法がありますが、最初に届出をしない一般的な個人事業者は自動的に届出不要の最終仕入原価法を選択することになります。これらの変更承認申請をした場合は承認後の3年間は継続する必要があります。
仕入
仕入価格は引取運賃・荷役費・運送保険料・手数料・関税等の付随費用を含みます。
事業主勘定
- 事業に関連しない出費や生活費をお店から引き出す場合は事業主貸で処理します。
- お店に対する立替金や事業用預金に記帳される預金利息は事業主借で処理します。
これらはお店の立場から見た貸借関係にあると思えば、理解しやすいでしょう。お店から借りた事業主貸や立替えた事業主借は期中処理はせず、期末の決算時に一括相殺処理します。具体的には(元入金+当期利益+事業主借)-事業主貸=翌期首の元入金になります。
個人の業務において一つの支出が家事上と業務上の両方に係わりがある費用を家事関連費と言います。これは次の事項に該当するもので明らかに区分することができる金額に限られます。つまり、根拠のある説明ができるかどうかが是認のポイントです。
- 主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ業務に必要な部分
- 青色申告者で取引の記録などに基づき、業務の遂行上直接必要な部分
これらの費用が発生した場合は経費に全額を記帳し、家事費部分を決算時に事業主貸へ振替えます。
6/10 租税公課 自動車税39,000円 現 金 12/31 事業主貸 自動車税家事分40%15,600円 租税公課 この場合、租税公課の残高は39,000円-15,600円の23,400円で必要経費が減少します。その他、家事関連費用は地代家賃、通信費、接待交際費、水道光熱費、車両関係費などがあります。
地代家賃
生計を一にする配偶者や他の親族に支払う地代家賃などは経費になりませんが、事業の使用部分は固定資産税の名義が違っても使用面積割合で経費に算入できます。
通信費
固定電話や携帯電話の通信料、プロバイダ、レンタルサーバー、ADSL接続料、切手などが該当し、固定電話や携帯電話は自分で使用割合を見積ることができます。
利用頻度にもよりますが特別な記録は必要なく、請求内訳書の保存でこと足りますので、請求内訳書から私用分を毎月チェックし、決算時に事業主貸として控除するのが望ましい方法です。接待交際費
接待交際費は取引先との商談や社内での打ち合わせなどに要する通常程度の費用を言い、個人事業の場合は接待交際費の上限枠はありません。次のような業務上必要と判断された打ち合せや会議などの費用は会議費で処理されます。
- 会議のときの昼食弁当代や茶菓子、会場費、役職員間を除く、1人当たり5,000円以下の飲食代
- 近くのレストランでの打合せ(ランチ程度の食事)
これらの飲食代は別途に損金算入できますが、領収書があれば一律に認められるわけではありません。領収書裏面に必ず接待の相手方の名前や人数などを記入し、後で説明できることが条件です。5,000円を超えた場合は費用全額が交際費に該当します。
取引の予定額と比べ不相応に高額な接待は後で否認される可能性が高くなりますが、回数の多い場合は自主的に自己負担相当分を決算時に控除することで必要性を補強することがあります。商品券や贈答品は自家消費と誤解されないよう、なるべく証拠の残る宅配便を利用することも必要でしょう。水道高熱費
ネットショップを住居で営業する場合の経費には電気代、暖房用灯油などが対象になります。水道やガスが事業に必要で、且つ一般家庭と比べ相当程度になれば、経費に認められることもありますが、通常は経費に算入しないのが無難です。
車両関係費
これには燃料費や車検又は定期点検代、オイル交換、タイヤなどの消耗品が該当します。これらも自分で走行割合を見積ることができるので、自動車運転日報などの特別な記録は不要です。余り使用しない場合、市販ノートを利用した簡単な運転日報を作成した方が説明しやすいでしょう。
年月日 行 先 出庫時メーター 入庫時メーター 走行距離 リース料
一般に事務機器類のリース期間は通常3年~7年の間で決められ、リース取引には中途解約不可でフルペイアウトのファイナンス・リース取引とレンタルと称されるオペレーティング・リース取引とがあります。
更にファイナンス・リース取引は売買取引とみなされる所有権移転取引と所有権移転外取引とに区分されます。(詳細:社団法人リース事業協会)所有権移転外ファイナンス・リース取引
- 所有権移転条項がない
- 割安購入選択権がない
- 汎用性のある特別仕様でない
このような所有権移転外ファイナンス・リース取引は税務上、売買取引とみなされ、リース資産の償却方法はリース期間定額法になりますが、中小企業が行うリース取引や「少額な資産」、「短期」のリース取引で所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃借料として経理した場合は減価償却費として、損金算入が可能です。
ファイナンス・リース取引の消費税もリース物件の引渡時に売買取引があったものとみなされるため、リース取引開始時にリース料総額分の消費税を税額控除します。ただし、支払リース料を費用処理した場合の消費税分はリース料の支払うべき日の属する課税期間における課税仕入として分割控除処理ができます。
なお、中小企業の会計指針における所有権移転外ファイナンス・リース取引は通常の売買取引に準じて減価償却費処理を行いますが、これらの会計処理は任意適用なので、通常の賃貸借取引に準じたリース料処理を行うこともできます。この場合は重要性のないリース取引を除き、未経過リース料を注記します。
販売目的の商品を消費又は使用する場合は原則として通常販売価格に相当する金額で売上計上します。
- 消費商品の取得価額か販売価額の70%かいずれか多い額を評価額として売上計上
- 消費商品が劣化などで通常価額での販売ができない場合は処分可能価額で売上計上
金額が多いと粗利益率が変動するので、家事消費が家族構成からみて適正かどうかの判断が必要です。同業他事業者と比べ粗利益率が低い場合は自家消費の計上額が適正であるかどうかの確認も必要です。
特に飲食料品を取扱う場合は補助簿を作成し、明確に区別することが大切です。自家消費は家庭で使用する自家用消費と接待交際費、広告宣伝費などに使用する事業用消費とがありますが、記帳処理方法がそれぞれ異なるので注意が必要です。自家消費の記帳
6/10 事業主貸 39,000円(販売価格×70%) 売 上 ←家庭で消費又は使用 12/3 接待交際費 15,600円(取得又は通常販売価格) 売 上 ←贈答品として使用 12/3 広告宣伝費 15,600円(取得又は通常販売価格) 売 上 ←試供品として使用
ネットショップであっても現金管理は必要です。毎日記帳できない場合、現金の実際残高と帳簿残高とが一致しないことがあります。現金の実際残高と帳簿残高が不一致の場合は実際在高に一致するよう帳簿残高を修正します。 不一致の原因は一般的に現金売上の記帳漏れや立替払いの経費を支払ったと錯覚する場合があります。この場合、現金実際在高と帳簿残高との差額を原因が判明するまで「現金過不足勘定」に振替え、原因が判明時点で適切な勘定科目に振替えます。
現金過不足勘定の設定例
6/10 現金過不足 39,000円 現 金 ←実際残高より帳簿残高が多い 12/3 現 金 15,600円 現金過不足 ←実際残高より帳簿残高が少ない 原因が判明した場合
現金過不足勘定は不一致の原因が判明するまでの一時的な処理です。従って、原因が判明すれば適切な勘定へ振替えする必要があります。上記の例の場合は7/10に事業主借の計上漏れと判明すると現金過不足勘定から事業主借勘定へ振替え、12/9が事業主貸(生活費)の計上漏れとわかれば、現金過不足勘定から事業主貸勘定へ振替えます。
7/10 事業主借 39,000円 現金過不足 ←事業主借が増加する 12/9 現金過不足 15,600円 事業主貸 ←事業主貸が増加する 不一致のまま決算する場合
不一致の決算は決算直前の現金過不足勘定残高を「雑損勘定」又は「雑収入勘定」で処理します。
12/31 雑 損 39,000円 現金過不足 ←現金過不足が借方残高の場合 12/31 現金過不足 15,600円 雑収入 ←現金過不足が貸方残高の場合 以上の処理が原則ですが、現金残高を常に0円にする次のような方法があります。
7/9 事業主貸 200,000円(7月分生活費) 普通預金 7/10 荷造運賃 5,620円 事業主借 まず、事前に預金から生活費の名目で預金を引出し、その後に必要経費と同額をお店側に入金記帳し、事業主の生活費で必要経費を立替えますが、このまま次の生活費を引き出すまでの間、記帳処理は特に不要です。