青色申告者

広島県で事業所得者の約7割弱が利用する65万円の青色申告特別控除の適用を受けるには、正規の簿記の原則に従って記帳し、その記帳に基づき作成した貸借対照表及び損益計算書を期限内に提出する必要があります。
正規の簿記の原則に従った記帳は一般的に複式簿記による日々の記帳を指し、その他に商品在庫の棚卸や債権債務の管理、賃金台帳の記入などの記帳が必要です。
複式簿記は入出金伝票や振替伝票から補助簿に記入して総勘定元帳に転記し、月末で締めて月次試算表を作成する方法と領収書や請求書、通帳などから直接パソコンの会計ソフトに入力する方法があります。
なお、複式簿記で記帳しなくても次の簡易な方法で10万円の青色申告控除を受けることもできますが、記帳の際は次の点にご留意ください。

  • 数字はアラビア数字を用い、行間の半分位の大きさで書く
  • 取引の日付は必ず記入する
  • 「摘要」欄は取引内容を簡潔に記入する
  • 数字の訂正は数字の一部だけでなく、全体を書き直す
  • 訂正後の数字は二重線で消した数字の上部に書く

事業用預金口座の開設

売上の入金及び仕入や経費の支払いは事業用を使用し、生活費は努めて定期定額を引出します。事業用と私用の口座区別がない場合は税務調査が家族全体に及ぶ場合もあります。個人口座の開設は個人名の他に店名が記載できるかどうかを金融機関で確認します。

領収書の保存

領収書があれば、簡単に経費になると思い込んでいる人もいるようですが、これは間違いです。領収書で日付と金額は判別できますが、例え支出金の内容が事業に関連していても、理由や効果が不明なため、経費に計上してはいけない場合があります。効果のない支出は事業目的とは言えないのです。
領収書のない場合でも支出額・支出先と領収書がない理由を税務署に対し、納税者が合理的に説明できれば、経費の算入が認められます。
何に使ったかを忘れないうちに必ず領収書の裏面などに内容や理由を記入して置く必要があります。領収書を紛失したり、交通費やお祝い金などのように領収書がもらえない場合は経費となる支出が確かにあったことを証明する証票類として「出金伝票」や「メモ」などに詳細な内容を記録保存しておくことが大切です。

証票類の保存

証票は取引の基礎となる原始記録に関する各種伝票書類を指します。例としては、収入金額の計算に必要な請求書、納品書、売上伝票、領収書控や必要経費の計算に必要な相手先発行の請求書、納品書、売上伝票、領収書、出金伝票などがあります。
その他、送り状や見積書、振込票控など多種多様な証票類がありますが、税務調査の際は必ず帳簿の記載内容が証票類と合致するか、綿密な突合せが行われます。

帳簿の種類

簡易帳簿

以下の5冊を備えて記帳することが求められます。

現金出納帳 現金の出納を日々管理します
売掛帳 売掛先別に未収入金を管理します
買掛帳 仕入先別に未払金を管理します
経費帳 経費項目毎に分類集計します
固定資産台帳 減価償却資産を管理します

収支日計式簡易帳簿

この帳簿は経費毎に記入番号が決まっており、月々の集計が容易で消費税の課税や非課税などの売上区分もできるため、小規模事業者が簿記の知識がなくてもこの一冊で簡単に記帳ができることから、収支日計式簡易帳簿は簡易帳簿と同様、継続的に税務署や各地の青色申告会、商工会議所、商工会などで販売されていましたが、パソコン会計の普及に伴い利用者は殆どいないようです。

現金式簡易帳簿

その日の入出金を1冊に記録する帳簿です。前々年の所得額が300万円以下の現金主義の適用を受けている場合、この帳簿でも良いとされます。現金主義用決算書は簡素で棚卸が不要のため記帳に手間がかかりません。

青色申告会の会計ソフト

青色申告会の個人事業者向けのパソコン用会計ソフトウェアのブルーリターンAは青色申告会が50年を超える指導実績をもとに、使いやすさを追及した会計ソフトです。
仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳などの複式簿記の会計帳簿は元より、減価償却費の計算から青色申告決算書、所得税確定申告書、消費税確定申告書及び付表なども作成できます。

無料会計ソフト

無料の会計ソフトはVectorにも多数ありますが、例えば税理士作成の加藤かんたん会計は消費税に完全対応し、個人の一般用・不動産用と法人用とがあります。このソフトは不正使用防止のため毎月末に機能停止しますが、再ダウンロードで入力データは継承して利用できます。
エクセル仕様で消費税対応の小企業向けに現金預金の出納から仕訳、試算表、元帳、決算書などが作成できるInage式会計帳簿はお薦めの帳簿ソフトです。

クラウド型会計ソフト

利用者側はブラウザだけがあれば良く、インターネット経由で事業会社のサーバーに接続する保守管理不要の形態であり、システムが提供する最新機能とデータは事業会社のサーバ内に存在します。
インターネットを介して帳簿入力や集計、決算ができる有料Saasネットde記帳は広島県商工会連合会の推奨する商工会員向けの自主記帳システムです。
同様にインターネットを利用し、日々の取引の仕訳入力で、自動的に試算表や元帳、青色申告決算書が簡単に作成できるfreeeは、ネットバンクやクレジットカード決済ツールのSquareなどとの連携も可能な中小企業や個人事業主を主な対象とするクラウドサービスです。
これらの決算書から作成する税務申告書はご自身でできない場合は税理士に委託することになりますが、個人は国税庁の確定申告書等作成コーナーを、法人の場合は税務申告書作成ソフトを利用する方法があります。
例えばNTTデータ社の達人シリーズは会計王、弥生会計、TACTiCS財務などの会計ソフトで作成された決算書データと連動するシステムで取込むこともできます。

記帳の義務化

平成26年1月からは、これまで年間の所得が300万円を超える人だけに課せられていた記帳・帳簿等の保存の義務が、所得税の申告の必要がない方を含めて所得があるすべての個人事業主に拡大されました。
確定申告は収支内訳書の添付が不可欠なので、該当しなくても何らかの方法で記録が必要です。

記帳内容

収入額と必要経費の内容は所得額が正確に計算できるよう、整然かつ明瞭に記帳する必要があります。売上や仕入など必要経費に関する記載内容に取引年月日、相手先の名前、金額、日々の売上及び支払金額などを記帳しますが、これらを裏付ける証票書類の作成や保存も必要です。

記録保存制度

不動産所得や事業所得又は山林所得があり、その年の前年12月31日における前々年分の所得税又はその年の3月31日における前年分の所得税が次のいずれかに該当する場合。

  • 確定申告書を提出している場合
  • 税務署長から所得金額などについて決定を受けている場合
  • 総収入金額報告書を提出している場合不動産所得や事業所得及び山林所得の総収入金額の合計額が3千万円を超える確定申告が不要な人

帳簿の保存期間と保存場所

帳簿の保存期間

種 類 青色申告者 白色申告者
帳簿類・決算書類 7年 7年
領収書・請求書・通帳など 7年 5年
その他の証票書類 5年 5年

帳簿の保存場所

帳簿や証票書類は納税者や事業所の住所地に整理し、保存する必要があります。

青色事業専従者

青色申告で最も節税効果が高いのが家族従業員の給与が必要経費になる専従者給与の適用です。この適用は青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出(変更届)書を所轄税務署へ提出します。
専従者氏名、年齢、職務の内容、給与金額、支給期などの書き方は届出書の裏面に記載されています。提出期限は事業継続者の場合は青色事業専従者給与を支払う年の3月15日までに提出します。
ただし、その年の1月16日以後の開業や新たな専従者の発生、変更などの場合はその開業の日や専従者に該当することになった日から2月以内に提出し、提出期限が土日曜日や祝日などに当たる場合はこれらの日の翌日が期限になります。

専従者の要件

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者その他親族であること
  2. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3. その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事している一定の場合には事業に従事することが出来る期間の1/2を超える期間であること

支給する給与額が次の状況などからみて相当と認められるもので、この届出書に記載した金額の範囲内で毎月記帳されているものに限られます。専従者が白色申告者の配偶者であれば86万円と配偶者以外の専従者一人につき50万円の白色事業専従者控除が認められる場合もあります。

  1. 専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその程度
  2. 従業員の給与及び同種同規模の事業に専従する者の給与の状況
  3. 事業の種類・規模及び収益の状況

以上の妥当性について審査されますが、ここで注意すべき点は受理されても、届出どおりの給与が認められるわけではないと言うことです。例えば、他に一般従業員がいる場合、公正な取扱いがなされているかどうかも斟酌されます。
毎月の専従者給与が低くても賞与で調節すれば、これも是正指導の対象となる可能性が高くなります。青色事業専従者の平成21年分の平均給与額が223万円であるのに対し、医療関係者の平均専給は年間500万円位と言われます。これは例外的なもので、一般事業者がこれ位を支給できるのであれば、法人成りが有利です。
家族とパートだけの小企業の場合は月々の源泉徴収所得税が不要の月額87,999円以内、年間賞与の目安に公務員の支給月数に準ずる4ヶ月分前後を届け出るのが一般的で、年間支給額も所得税が非課税となる103万円前後が実態のようです。
しかし、源泉徴収や年末調整事務が面倒でも専従給与をなるべく多くする方が節税に有利です。理由に次の点と見方を変えれば生活費や貯蓄さえ経費になるからです。

  • 所得額195万円以下の事業主の最低税率5%が一段階上がることがある
  • 専従者と事業主の両方とも税率が5%になることがある
  • 青申特別控除前所得が290万円を下回って個人事業税の5%が回避できる場合がある
  • 専従者も加入できる小規模企業共済で年間84万円の掛金が全額所得控除できる

届出書の専従給を88,000円とし、源泉徴収税の最低額を納付すると支給実態を証明できます。金額を○円以内又は○ヶ月分以内と記入すると、実額を調整できます。
ただし、明らかに事業主の所得を上回る支給額や特に理由がないのに毎月の支給額を変動すれば、行き過ぎた節税として否認の対象となる場合があります。
正当な理由として考えられる次のような場合は専従者の給与が例え事業主の所得を上まわったとしても、その専従者給与がその勤務の状況などからみて相当な金額であれば、直ちに否認されることはありませんが、このような状況が経常的に継続する場合は好ましくはありません。

  • 事業主が高齢、病弱などで、実際は息子専従者が一切の経営をきりもりしている
  • 災害、貸倒れなど偶発的損失により、事業主の所得が著しく減少した場合
  • 貸倒れや不慮の災害、景気変動などの偶発的な理由で、所得が赤字になった場合

営業名義人の変更は原則的に譲渡所得の対象なので、税務署の確認が必要です。一般に親子間の名義変更は資産-負債=110万円を超える部分が生前贈与とされます。
通常は営業に係る全ての債権債務を継承するので、個人企業の場合は特に心配する必要はありませんが、元入金と事業主貸と事業主借を相殺した残高を注目します。

源泉徴収所得税の納付

一般従業員や青色専従者から源泉徴収した所得税は原則として翌月10日までに納付しますが、常時使用する従業員数が10人未満であれば、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を税務署に届け出ると7月と翌年1月の年2回で納付することができます。なお、この適用は届出書を提出した月の翌々月分の納付から適用されます。

白色事業専従者の控除額

白色申告者が事業に専ら従事する家族従業員の数、配偶者その他の親族かの別、所得金額に応じて計算される金額を所得控除できる白色事業専従者控除の要件は青色事業専従者と同様です。
これらの控除額は次の金額のいずれか低い額で、給与でなく控除なので記帳は不要ですが、確定申告書にこの控除を受ける旨、その金額など必要事項の記載が必要です。

  1. 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円です。
  2. この控除前の事業所得金額を専従者数に1を足した数で割った金額です。
    配偶者だけの場合、控除前の事業所得金額が172万円以上必要だと言うことです。

以上の概要ですが、青申や白申を問わず専従者は控除対象配偶者や扶養親族に該当しないので、青色申告者の場合、事業所得が少なくても配偶者の最低専給は90万円を支給しないと意味がないことになります。


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