労働保険

労働保険は労働者災害補償保険と雇用保険とを総称したもので、農林水産の事業の一部を除き、労働者を一人でも雇用すれば自動的に適用事業とされます。これらの保険給付は個別に行われ、労働保険料の納付などは原則的に一体として取扱います。

  1. 労働保険役員等以外の従業員を一人でも雇用すると所轄の労働基準監督署へ「労働保険関係成立届及び労働保険概算保険料申告書」などを提出し、保険料の概算申告と納付が必要です。
    役員等が労災に加入するには、労働保険事務組合に事務委託することで特別加入ができます。その他に労働保険料の金額にかかわらず、分割納付が認められる特典もあります。比較的委託手数料が低廉な事務組合は事業協同組合、商工会議所、商工会などに設立されています。
  2. 雇用保険は所轄の公共職業安定所へ「労働保険関係成立届控及び雇用保険資格取得届」などを添付し、「雇用保険適用事業所設置届」を提出します。所定労働時間が週20時間以上、且つ、一年以上の雇用見込みのあるパートは強制加入です。

従って、事業主は成立手続を行い、労働保険料の納付義務が生じ、これらの保険料は従業員に支払う賃金総額に保険料率を乗じた額になります。そのため、年3回以下の賞与も労働保険の賃金総額に含まれます。詳しくは労働保険制度をご覧ください。
労災保険分は全額が事業主負担、雇用保険分は事業主と従業員双方で負担し、労働保険料算定の基礎となる期間は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間です。

労災保険

従業員や使用者の軽い業務上の傷病を国民健康保険や健康保険の保険証で治療することがありますが、この行為は例え使用者のポケットマネーで一部負担しても、保険金の詐欺行為になります。
労働基準法で業務上の事由による傷病などは使用者側の無過失責任が問われます。重大事故が発生すると企業の破綻が想定され、被災労働者への補償が不十分となるため、労働基準法は業務上の傷病について次のような義務を使用者に課しています。

  1. 傷病の療養に必要な費用を負担する療養補償(第75条)
  2. 3年間を限度とする休業補償(第76条)
  3. 障害が残った場合はその等級に応じた障害補償(第77条)
  4. 死亡した場合は遺族補償(第79条)並びに葬祭料(第80条)
  5. 休業補償が3年を超える場合の打切補償(第81条)を支給しなければならない

ただし、これらの補償が労災保険などで補償される場合、その範囲内で補償責任を免除されます。そのため、役員など以外の従業員を1人でも雇用すると労働日数と無関係に労災保険の加入が必要です。
従業員を常時使用する中小事業主や従業員以外で事業に従事する者などは労働保険事務組合に事務委託することで第1種特別加入者に加入できます。
労災保険は労働者の業務上又は通勤途上の負傷や疾病、死亡などに対し、被災労働者と遺族に必要な給付を行います。また、労災事故が発生しやすい事業かどうかにより労災保険料率は定められますが、最低1,000分の3103まであります。
適用される保険料率は労働基準監督署に届出る事業の種類で決まり、通信販売の卸売業・小売業、飲食業などの場合は1,000分の4になります。

雇用保険

労働者が失業した場合や労働者の雇用継続が困難となる事由が生じた場合は生活及び雇用の安定を図り、併せて再就職を促進するために必要な給付を行います。

失業給付の基本手当

雇用保険で受給できる失業給付は週所定労働時間の長短にかかわらず、離職前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間が必要ですが、倒産や解雇などで離職された被保険者の場合は離職前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間が必要です。
1日当たりの金額を基本手当日額と言い、年齢区分毎に上限額が定められています。この基本手当日額は原則として離職日の直前6ヶ月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180日で除した賃金日額50~80%で、賃金の低い人ほど高率になります。
ただし、求職申込み後の失業状態にある7日間は基本手当が不支給の待期期間であり、自己都合の退職又は自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合、3ヶ月間の給付制限期間が加算されます。
【基本手当日額の上限額】(平成23年8月1日現在:最低補償額1,864円)
■再就職が困難な方に対する給付日数の延長
特定受給資格者や期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職された方で、次のa~cのいずれかに該当し、特に再就職が困難だと公共職業安定所長が認めた場合は給付日数が60日分延長されます。
被保険者期間が通算して20年以上かつ所定給付日数が270日又は330日である方は30日分が延長されますが、就職が困難なものに係る所定給付日数が適用されている方は既に所定給付日数が手厚くなっているため、延長の対象になりません。

  1. 受給資格に係る離職日において45歳未満の方
  2. 雇用機会が不足している地域として指定する地域に居住する方
  3. 公共職業安定所で知識、技能、職業経験、その他の実情を勘案して再就職支援を計画的に行う必要があると認められた方

なお、自己都合による離職でも特定受給資格者となる場合があります。判断基準は例えば、イジメや45時間を超える時間外労働が離職日前3ヶ月間連続した場合などが該当します。

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雇用保険の加入対象者

所定労働時間が週20時間以上、且つ、6ヶ月以上雇用見込みのある次の労働者は原則として被保険者に該当しますが、正社員や契約社員、パートなどの名称に使い分けているのが実態です。なお、65歳以降の新規雇用者は被保険者に該当しません。

  1. 一般被保険者(65歳未満の常用労働者)
  2. 高年齢継続被保険者(65歳以前から引き続き同一事業主に雇用される者)
  3. 短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される者)
  4. 日雇労働被保険者(日々雇用される者、30日以内の期間を定めて雇用される者)
  5. 週20時間以上40時間未満の労働時間で雇用見込み期間が31日以上6ヶ月未満の者

雇用保険料

年度概算保険料の計算に使用する雇用保険料(令和2年度~)

事業の種類 保険率 事業主負担率 被保険者負担率
一般の事業 9/1000 6/1000 3/1000
農林水産・清酒製造の事業 11/1000 7/1000 4/1000
建設の事業 12/1000 8/1000 4/1000

保険年度の初日で満64歳以上の従業員は一般保険料のうち雇用保険相当額が労使ともに免除されます。
ただし、任意加入による高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者は対象から除外されます。

雇用保険の被保険者負担額と端数処理

雇用保険の被保険者負担額は従業員に支払われた賃金額に上記の被保険者負担率を乗じて算出します。この被保険者負担額は従業員に賃金を支払う都度、その賃金に応ずる負担分を賃金から控除します。
賃金に1円未満の端数がある場合「通貨の単位及び貨幣の発行などに関する法律」に基づき計算しますが、事業主が雇用保険の被保険者負担額を賃金控除する場合は控除後の賃金支払い時点で端数処理します。この結果、50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げになります。
この端数処理の取扱いに労使間で慣習的な取扱い特約のある場合、この限りではありません。例えば、従来から切り捨てされていた場合、引続き同様の取扱いを行っても差支えないとされます。

労働保険料の納付

保険料は年度当初に概算で申告・納付し、翌年度に前年度の賃金総額の確定額で、これを清算します。また、保険年度初に前年度分の不足が生じた場合、その不足額と当年度の概算保険料を納付します。
これらの重要な手続きを「年度更新」と言い、毎年6月1日から7月10日までの間に処理手続を行います。概算保険料が40万円以上や労働保険事務組合に事務委託している場合は3回の分割納付ができます。
労災保険か雇用保険の一方のみに保険関係が成立する場合は20万円以上が分割の対象になります。年度更新手続きが遅れますと追徴金を課せられる場合があります。

前年度以前に成立した事業場
第1期 第2期 第3期
4月1日~7月31日 8月1日~11月30日 12月1日~3月31日
納期7月10日 10月31日 1月31日

年度途中において、賃金総額の見込み額が当初の申告より100分の200を超えて増加し、且つ、その賃金総額による概算保険料の額が申告済の概算保険料に比べ、13万円以上増加する場合は当該増加額を増加概算保険料として申告・納付します。

労働保険料の負担額

労働保険料は従業員の賃金総額に労災保険や雇用保険の各保険料率を乗じて算出しますが、確定労働保険料の申告に併せ一般拠出金も申告する必要があります。
一般拠出金はアスベストによる健康被害の救済に関する法律によりアスベスト健康被害者の救済費用に充てるため、業種を問わず全ての労災保険適用事業所の事業主が全額負担するものです。労働者に払った賃金総額×一般拠出金率になります。
【ネットショップ例】基本給及び通勤等の各種手当を含む総額1,000,800円の場合

         4    0.02    8.5
1,000,800円×(────+────+────)=12,530円(事業主負担額)
                       1,000  1,000   1,000
        5
1,000,000円×───(雇用保険被保険者負担率)=6,000円(従業員負担額)
                     1,000

なお、実際は全従業員の賃金から控除する雇用保険料の預り金を充当するので、次の計算になります。

        4+0.02         13.5
1,000,800円×────+1,000,800円×───-417円×12ヶ月(被保険者分預り金)=12,530円
                      1,000         1,000

第一種特別加入者の保険料

特別加入者が業務災害などの労災保険を受給する場合、給付額の計算基礎になるのが給付基礎日額です。この基礎日額に365日を乗じた額を保険料算定基礎額と言います。年度中途の加入脱退は月単位で保険料算定基礎額を算出します。
給付基礎日額の選択は自分の日当はいくらが適正なのか、或いは直近数年の平均所得額を365日で除した額を目安にするのか、特に制限があるわけではありません。
■年間保険料=給付基礎日額×365日×適用事業保険料率
給付基礎日額、保険料算定基礎額及び小売業であるネットショップの保険料となる第一種特別加入者の給付基礎日額と年間保険料は次のとおりです。明らかな業務上災害であっても通常の労働時間外で従業員などの現認者がいない場合、給付が受けられないことがありますので、承認申請書の業務の具体的な内容や労働時間欄などの記入は特に注意が必要です。

第一種特別加入者の給付基礎日額と年間保険料
給付基礎日額(A) 保険料算定基礎額(A)×365日 年間保険料
3,500円 1,277,500円 5,110円
4,000円 1,460,000円 5,840円
5,000円 1,825,000円 7,300円
6,000円 2,190,000円 8,760円
7,000円 2,555,000円 10,220円
8,000円 2,920,000円 11,680円
9,000円 3,285,000円 13,140円
10,000円 3,650,000円 14,600円
12,000円 4,380,000円 17,520円
14,000円 5,110,000円 20,440円
16,000円 5,840,000円 23,360円
18,000円 6,570,000円 26,280円
20,000円 7,300,000円 29,200円

社会保険及び労働保険の成立届

社会保険

従業員だけではなく、常勤の役員も強制的に社会保険の被保険者になるため、健康保険への加入や都道府県別の保険料の納付等に関する手続は事業所の所在地を管轄する国民年金機構年金事務所へ健康保険・厚生年金保険新規適用届を適用対象の事業開始日から5日以内に添付書類と一緒に提出します。
前期高齢者納付金、後期高齢者支援金、退職者給付拠出金及び病床転換支援金等に充てる特定保険料率と加入者に対する医療給付、保健事業等に充てるための基本保険料率を合わせた料率を一般保険料率と言い、都道府県別に異なります。広島県の場合は次のとおりです。(令和3年度分~)

標準報酬月額に対する割合 事業主負担 従業員負担
健康保険料(協会けんぽ広島支部) 5.02% 5.02%
介護保険料(40歳以上65歳未満) 0.79% 0.79%
厚生年金保険料 8.914% 8.914%
児童手当拠出金 0.15%
合計負担率 14.874% 14.724%

パートさんも通常勤務の4分の3以上の時間であれば加入義務が生じます。なお、健康保険の給付や任意継続等に関する手続は全国健康保険協会が行います。
また、常時使用する従業員が5人未満の法人以外の事業所は過半数以上の従業員が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して年金事務所長等の認可を受けると、該当者全員が自動的に加入する任意適用事業所になりますが、経営内容を含めた審査は厳しいようです。
保険給付や保険料などは、強制適用事業所と同じ扱いですが、被保険者の4分の3以上が任意適用事業所の脱退に同意した場合は事業主が申請して年金事務所長等の認可を受け、適用事業所を脱退することもできます。

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