売上目標の設定

一般的に売上高=客単価×客数によるものとされています。つまり、売上高の増加には、客単価や客数のいずれか、又は両方を増大させることが必要です。この客数は新規客以外のリピーターが含まれるので、正確には延客数と考えます。この延客数はネットショップにとって、極めて重要な概念です。
月間売上は(新規客単価×新規客数)+(リピーター単価×リピーター数×月間購買頻度)と考えられます。これは、更に「(新規訪問客数+リピーター客訪問数)×(買物カゴページ到達率×買物完了ページ移行率)×平均購買単価」に分解することができます。
このように延べ客数に占めるリピーター割合を高めることで、中核となる売上の確保が可能になります。売上の増加と安定化には、核となるリピート客の確保が欠かせませんが、アクセス解析ツールを利用し、カゴ落ち割合を減少させることも重要です。
リピートを得るための方策をまとめると次のようになります。

  • 他店にないアイディアに溢れた「オンリーワンサービス」を提供する。
  • リピート客づくりにブログ、メルマガ、ツィッター、掲示板など口コミを利用する。
  • 経験が必要ですが、「顧客は個客」であることを意識し、対応マニュアルを画一化しない。
  • リピート客づくりに独自の関係保持の仕組みを構築する。
  • アフターフォローを意識し、購入後も手を抜かない。
  • 「リピート客づくり」の最終目標は「熱狂的な信者づくり」と意識する。

目標利益の確保に必要な売上高

目標利益の確保に必要な売上高は損益分岐点の算出を応用します。(Excel版)

        固定費+目標利益
損益分岐点= ───────────
                        1-変動比率

固定費は売上の増減に関係なく支払う費用
変動費は売上の増減に比例して変動する費用
変動比率は変動費÷売上高で計算しますが、売上原価率を使用する簡便法もあります。変動費の最大要素は仕入原価なので変動費率が低いほど利幅が大きくなります。
【事例】
1.月間売上額100万円(平均客単価5千円、注文客数200人)
2.仕入原価65万円、梱包料200円
3.固定費(サーバー代5千円、インターネット関連費1万円、アルバイト代15万円)
4.目標利益20万円(借入返済元金を含む)

        16.5万円+20万円
損益分岐点= ─────────── =約117.7万円
                      65万+@200×200人
                1- ───────────
                            100万円

この結果、目標利益20万円の達成に最低117万7千円の月間売上が必要です。固定費割合の低いネットショップの利益確保は変動費に影響されやすい特質もあります。

損益分岐点売上のシュミレーション
固定費 万円 変動費 万円 限界利益 万円
目標利益 万円 売上額 万円 限界利益率 %
損益分岐点 万円 損益分岐比率 %

経営レバレッジ係数とは、売上高の増減率に対する営業利益の増減率の割合を示し、経営レバレッジ係数=営業利益の増減率÷売上高の増減率の算式で表されますが、次の算式に変換することができます。

                1
経営レバレッジ係数= ─────────── (倍)
                                  1-損益分岐点比率

例えば、売上が○%増加した場合に営業利益率は何%アップするかとか、逆に営業利益率を○%増加するには売上を何%増加させればよいかなどの指標として利用されます。
事例の場合の損益分岐点比率は53.2%なので、経営レバレッジ係数は2.137倍となります。
その結果、売上を5%アップすれば、営業利益率の増加率は2.137×5=10.69%のアップになり、営業利益率を50%アップにするには、売上の増加率を50%÷2.137=23.4%アップすればよいことがわかります。
このように売上と営業利益の増減率は単純比例しないので、利益構造の特性を理解しておく必要があります。

人時生産性と人時売上高

現況の人員配置が適正であるかどうかを検証するには、一般に飲食業界での労働生産性のモノサシである人時売上人時生産性などがあります。人時売上は時間別や日別に把握することで、繁忙時と人員数の適正化を図るのみならず、人件費率の管理にも有効な指標で数値が大きいほど従業員の労働効率が高いことを示します。

人時売上と人時生産性のシュミレーション
月売上 月人件費 月労働時間 時間
人時売上 平均時給 人件費率 %
粗利益率 % 人時生産性 目標人件費率 %
目標人時売上 円/時間 目標人時生産性 円/時間

目標アクセス数の設定

検索結果の1ページ目に掲載されると1位で検索数の約20%、10位で約1.5%のアクセス件数が発生すると言われ、目標達成には、損益分岐点を上回る売上を確保しなければなりませんが、そのために必要なのが「コンバージョン件数」と「アクセス件数」です。
この場合、最低の目標月間成約件数は損益分岐点売上÷平均客単価なので、117万7千円 ÷ 5千円の236件です。成約件数はアクセス件数と相関するので、アクセス解析から成約率を求めます。
この成約率は商材によって違いがありますが、優良店は3%前後の実態であることから、事業継続が可能な1%以上を最低目標とします。仮に1%の場合、月間アクセス数は目標成約件数÷成約率(236件÷0.01)の23,600アクセスになります。
つまり、一日平均787アクセスが必要とされるわけですが、開業直後からこのようなアクセスを毎日確保することは現実的ではありません。そのため、成約率の高いリピーターの確保対策がより重要視されます。

効果的な値引きの対策法

値引きを要求されることは、ほとんどないと思いますが、メールなどでのお問合せは次の点に注意します。この場合はお問合せのメールを契機に次回の購買機会に繋がるよう丁寧な応対が得策です。
最初にお問合せのメールの内容は価格だけでなく、商品をどれ位気に入っているのかの見極めが大切です。値引きできない旨の表示はお店の雰囲気が冷たくなるので、事実であってもお薦めできません。

  • 初期設定の販売価格は正当な理由なく安易に付け替えしない。時期をずらし、二段階で値引きをするとインパクトが強まり、訴求効果が高い。
  • お店の方針として値引きはありませんので、ご容赦願います(とてもご無理なご注文です)などの理由を説明し、丁寧な即答を心がける。
  • 根拠もなく、価格が高いとの言い分は鵜呑みにしない。
  • 値引き交渉は先に価格を聞き出し、妥協点を探りながら、こちらも簡単な条件を提示します。そうすることで、お客様は対等に交渉した満足感(お買い得感)が得られ、お店側もコミュニケーションの糸口を得ることができます。
  • 価格以外の条件で対応し、バーゲンセールの予定があれば、これをお知らせする。

増量戦略

価格を下げずにお買い得感を高める方法に増量戦略があります。例えば、10個入り1,000円の商品を12個に増量して1,000円で販売すると1個当たりの商品単価は100円から83.4円になります。
この場合、内容量を20%増量しても、自動的に全体コストが20%増加するわけではなく、この商品単価で価格設定するには、商品を16.6%値引きし、10個を834円で販売することになりますが、大多数の消費者は値引きより、増量の2本に相当する200円分を得したと感じ、売上が大幅に増加することが知られています。
つまり、消費者は2個の増量と166円の値引きでは、後者より前者の方に魅力を感じ、この戦略は価格弾力性の高いとされる日常的に消費する食品や日用品などの期間限定販売との併用が効果的です。
また、逆にやむなく値上げが必要となった場合は実質的な値上げ策として内容量を減量し、価格を据え置くことで価格に敏感な消費者に対し、心理的な抵抗を和らげる効果もあります。

クーポンの発行

値引きは一般にクーポンを臨機応変に組合せて利用すると効果があります。特に実店舗のある場合のクーポンはサイトページから印刷することで、次のようなプレゼントや割引き、無料サービスの優待券として広く発行されています。このようにクーポンは内容次第で値引きや無料サービスに対応できる便利なシステムです。

  • 指定商品50円値引き、指定商品10%値引きなどの個別値引券として発行する。
  • 一定額以上に購買額の5%値引き、曜日指定の5%値引き等の総額値引券として発行する。
  • 送料、ラッピング、振込手数料、粗品等の無料券として発行する。

その他、次回のお買い上げ以降に利用できるクーポン、一定回数や一定額以上の購買客に限定したクーポンなど、アイデア次第で工夫できる余地がありますが、有効期限と条件の記載は必須です。過度の値引きは価格不信を招くのでご注意ください。

値引きの方法

  • 購買商品の個別価格から値引きする方法

お試し値引き、バンドル値引き、理由あり値引き、在庫処分値引き、限定値引きなど

  • 購買商品の総額から値引きする方法

会員値引き、ポイント還元値引き、抽選値引き量販値引き記念日値引きなど

  • 共同購入商品の数量によって値引きする方法

共同購入を希望する全員を対象に量販値引き販売するシステムは共同購入ガイドが参考になります。
中でも、抽選値引きは特に訴求力が高く、インパクトのある方法としてよく利用されます。例えば、20人毎に1人が無料となるキャンペーンは10人毎に1人を50%引きとしたのと同じ値引き幅になります。
これは、全品5%値引きと同じ効果ですが、話題性や訴求の効力が全然違います。一部の家電量販チェーン店や航空会社が採用した実績があります。
【例1】キャンペーン前の客単価5,000円で客数80人、キャンペーンに変動のない場合

  • 全品5%値引きの場合

売上は5,000円×(1-5%)×80人の380,000円

  • 20人毎に1人無料キャンペーンの場合

4人が無料、売上は5,000円×(80-4)人の380,000円です。これは、キャンペーン前の売上400,000円の5%引きに相当します。

  • 10人毎に1人50%OFFキャンペーンの場合

8人が50%引き、売上は5,000円×(80-8)人+5,000円×(1-50%)×8人の380,000円です。こちらも、キャンペーン前の売上の5%引きに相当します。

【例2】キャンペーン効果で客数120人となった場合

  • 20人毎に1人無料キャンペーンの場合

6人が無料、売上は5,000円×(120-6)人の570,000円です。

  • 10人毎に1人50%OFFキャンペーンの場合

12人が50%引き、売上は5,000円×(120-12)人+5,000円×(1-50%)×12人の570,000円です。


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