口コミ効果

1967年の社会実験スモールワールド現象に基づく仮説で自分の知人を6人紹介し、その知人が各自で6人づつ紹介すると最終的に世界中の人と間接的な知人になれると言う6次の隔たりは到達率に誤差があるものの平均仲介数は5~7人と言われます。
例えば、1人がクチコミ情報を5人づつ自分の知人6人のつてを辿って発信すると1人×56の15,625人が情報を共有する計算になります。これらの情報はネズミ算で加速度的に増大し、驚異的なその伝播力は6次以内の間接的な重複しない知人の数が23人の場合、日本の総人口12,700万人を上回る1人×236=148,035,889人に達します。3人が同時に5人づつに発信し、11次の隔たりとなれば、3人×511=146,484,375人になります。
これがクチコミでなく、ネット界に流出すると時間の経過とともにコピーが繰り返され、削除不能状態になる危険性があります。
実存と信用を不可欠とするネット通販において重要な役割を果たすクチコミ情報はブログやSNS、ネット掲示板、比較サイトなどがあります。これらの具体的な効果はネットショッピング経験者を対象に実施した購買行動におけるクチコミの影響に関する調査で公開しています。
概要を見ると男性に比べ女性の方がクチコミを参考にしたり、購入を決めたりする割合が高いことから、影響を受けやすい傾向があるとの内容ですが、これらが掲示板などにリンクされると、お店のサイトアクセスが急激に増加することがあります。

  • 商品・サービスを購入する際、事前に情報収集をする人は83%である。
  • 選定時にクチコミの影響を受ける人は82%、クチコミが購入の決め手になる人は39%である。
  • 良いクチコミより悪いクチコミの方が影響大である。
  • 実際にクチコミで購入を決めた(やめた)経験がある人は67%である。
  • クチコミを信じる人は81%で、ポイントは「文章がしっかりしている」ことである。
  • クチコミの投稿経験がある人は全体の29%で、内容は「良いことを褒める内容」が多い。

その他に味や食感等の主観的要素が強い食品・飲料等は知人の情報を重要視する傾向があり、趣味嗜好のCD・DVD・楽器本・雑誌・コミック等は自己判断の購入傾向があると言われています。
例えば、ネット注文できる食材や食品、お菓子、デザートなどのクチコミ情報を集約したポータルサイトにおとりよせネットがあります。このサイトは登録モニターから募集した5人の消費者が試食し、審査を得なければ、商品が紹介されない特徴があります。

消費者のホンネとクチコミの実態調査

  • 価格.com 国内の有数の体験知・ホンネを伝える実体験のクチコミと評価の掲示板です。
  • Yelp 欧米最大級の米国発の総合口コミ情報サイトで信頼度アップのために実名投稿が推奨されている。
  • 横断検索ドットコム はてな、教えて!goo、Yahoo!知恵袋、OKWave、livedoorナレッジなどの質問系サービスを横断的に一括検索できます。

ネット調査の特性

インターネツト調査はネット上の登録モニターやメルアドリストのリピーターなどを特定し、ウェブページから質問する方法なので、経費と手間が大幅に節約できます。
無効回答の入力制御やデータの即時集計と加工が容易であることなどが特徴で、個人の通販店でも気軽に利用できる下記のリサーチサービスが提供されています。
調査時点前後の社会的な背景や現象などによっては、結果内容が異なることがあるので、継続的な調査や再調査を必要とします。

リサーチサービス リサーチモニター 費用等
Yahoo!リサーチ 15歳以上のYahoo!リサーチ登録者 200人/15問10万円~
楽天リサーチ 回答者は楽天のリサーチ登録者 100人/10問4万円~
マクロミル 回答者は独自に収集(年1回登録更新あり) 100人/10問5万円~

ネット調査の委託は料金だけでなく、調査会社の公開するモニター属性に注意します。モニターの多い調査会社は事前に特定属性でスクリーニングすることもあります。
インターネットリサーチ会社は各社のサービス内容、モニター特徴、実績などが比較できます。無作為抽出のモニターと異なり、ネットモニターは調査対象者の分布に偏りがあるので、次の一般傾向によるモニターの偏りを理解した上での利用が望まれます。

  • 自我、不安、不満、不公平感の強い人が多い傾向がある
  • 金銭や物欲が強い人が多い傾向がある
  • 低所得、低学歴、高齢者が少ない傾向がある
  • モニター慣れの人が多い傾向がある

これらの結果は調査の方法を問わず、相対的な傾向として認識し、本質を見誤らないことが大切です。集計結果を細かなパーセント単位の評価でなく、判断や選別、傾向の物差しなどに利用するのがポイントです。

アンケートフォームを利用した意見収集や満足度調査

アンケートの設問数と質問内容や選択肢の内容を入力すると自動作成されるウェブアンケートフォームは作成したアンケートに回答するためのURLが表示されるので、自店のサイトページやブログなどにURLを貼り付けて使用するのが一般的です。
また、アンケートの回答ページのURLを公開することで、不特定多数の人がアクセスできるようになりますが、パスワードを設定し、回答者の制限や調査結果の閲覧を制限できるウェブアンケートツールもあります。

  • DIPSurvey-Free 簡単で柔軟なWebアンケートで、回答方法の種類も豊富で思い通りに作成できます。
  • CreatorOf 集計結果のCSVファイルのダウンロードや集計結果の非公開が可能です。
  • フォームメーラー Google AnalyticsやYahoo!解析のトラッキングコードが設置可能です。

アンケートフォームの設定

アンケート様式は当然、お客様の立場や目線からのデザインを考慮する必要があります。自主単独に回答するアンケートの信頼性は一般に低いとされます。
一方、時間に余裕があり、設問数が少なく、内容に興味があり、且つ協力的であるとの前提を必要としますので、これの特徴を理解した上での活用が望まれます。
一般的な横列設問フォームは項目の評価を良くしたい設問者側の無意識の意図や誘導が現れやすく、回答者は調査の趣旨を汲み、自己利益と無関係の設問に迎合する傾向があります。前問が後問の回答に影響することも考慮しなければなりません。
設問の内容や順序によっては、回答者の思考に先入観や偏見などを与える影響があるので、これらの影響を極力薄めるような設問作成が要求されます。つまり、同一趣旨の設問でもフォームの設計次第で、差異が生じることもあり得ると言うことです。
例えば、設問に具体的なキーワードを入れると、無意識に知名度やブランド名に左右されることがあります。
【事例】広島菜、千枚漬、野沢菜など全国には美味しいお漬物がありますが、あなたのお好きな漬物のベスト3を教えてください。

  1. 広島菜
  2. 奈良漬
  3. 野沢菜
  4. 千枚漬
  5. その他 (     )

標本数の求め方

標本調査は有限母集団から抽出する人数を事前に決める必要があります。この人数は要求精度、回収率などを考慮して決定しますが、母集団(n)から選出する標本の大きさを決める手順は次の通りです。

  • 要求精度(e)の決定調査側が決定し、許容範囲内の最大誤差を示しますが、要求する精度の%が低いほど、標本数は当然に増加します。
  • 信頼率(a)の決定通常は95%ですが、費用対効果により90%や99%にする場合もあります。
  • 回収比率(p)の予測過去の調査結果を例に予測しますが、通常は50%(0.5)とするのが最も安全です。
  • 信頼率aに対応する標準正規分布表の%点(k)の自動決定例えば、信頼率95%(0.950)の値は標準正規分布表の0.475(47.5%)に相当します。0.475の値は両側確率で0.95(95%)を表し、縦行1.9、横列0.06の交点にあります。
                   母集団(n)
標本数(N)≧────────────────────────────+1

       要求精度(e)^2          母集団(n)-1
        (─────────────) × ──────────────
         標準正規分布の%点(k)    回収比率(p)×(1-回収比率)

【事例-1】

広島市に本社があるA社の全社員1,000人を対象にLINEの利用者を回収率80%、信頼率95%、最大許容誤差±3%で推定する場合、最低何人以上の無作為抽出の標本が必要であるか。【正答

母集団(n) 信頼率(a)に対応する標準正規分布%点(k)
要求精度(±e) % a=70.16% 1.04 a=90.10% 1.65
回収率(p) % a=74.98% 1.15 a=95.00% 1.96
標準正規分布%点(k) a=80.30% 1.29 a=98.02% 2.58
標本数(N) a=85.02% 1.44 a=99.90% 3.29

場所や時間、曜日によって性別、年齢層などの属人性が異なる街頭アンケートやウェブを利用した調査のような無限母集団から無作為抽出する標本はどの程度まで標本抽出の誤差を許容するかを決定する必要がありますが、その許容誤差範囲内に収めるのに必要な標本数を算出する方法があります。
例えば、許容誤差3%、信頼度95%に設定した場合の100回中95回は抽出標本比率と母集団比率との差が±3%の範囲内に収まることを意味し、この許容範囲内の誤差を「最大許容範囲」、最大許容範囲を2で除した値を「精度」と言います。また、この最大許容範囲がどの程度の確率で信頼できるかを計る尺度を「信頼率」と呼びます。
最大許容範囲(±e)=kp(1-p)/n

【事例-2】

高齢者のスマートフォン保有率の調査目的に本通商店街で予備調査をした結果、100人中55人が高齢者の方であった。本調査で信頼率80%、最大許容誤差±3%で推定する場合、最低何人以上の無作為抽出の標本が必要であるか。【正答

母集団比率(p) % 信頼率(a)に対応する標準正規分布%点(k)
要求精度(±e) % a=70.16% 1.04 a=90.10% 1.65
標準正規分布%点(k) a=74.98% 1.15 a=95.00% 1.96
標本数(N) a=80.30% 1.29 a=98.02% 2.58
a=85.02% 1.44 a=99.90% 3.29

ただし、アンケートフォームの設計や実際の配先の選定方法なども調査結果に大きく影響しますので、慎重な実施計画が望まれます。アンケート調査は方法を間違うと全く意味がなく、むしろ有害となって判断を誤ることがあります。例え事実であっても、経験や知識で培われる先入観のある人は自分の価値判断を基準に考えますので、数値を含め想定外のことは信頼しない傾向があります。つまり、オルタナティブ・ファクトとして自分の都合のよい情報を信頼しやすいと言うことです。


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