通常の販売価格は最大限の努力で確保した仕入価格に値入率を乗じて設定します。この場合、市場価格を無視する訳にいかないので、価格比較サイトでチェックすることも必要です。これらの価格調査は消費者の質問や評価、感想等の口コミ情報が充実し、商品開発にメーカーも注目する価格.comやECナビ、価格比較ナビ、大手通販サイトの商品ページ閲覧中に、他店の価格情報を自動ポップアップ通知する無料のShoppingFinder、地域の折込みチラシを検索できる電子チラシのShufoo!などがあります。
東証マザーズ上場のラクーン社が運営するオンライン激安問屋や姉妹サイトのスーパーデリバリー、仕入れ.orgなどは初心者向けの仕入サイトとしてオークションの出品などにも利用されているようです。食品や食材関連の仕入サイトにインフォマート社が運営するFOODS Info Martがあります。オンライン上には、やすいおろし.COMのような分野別の商品仕入サイトも数多くあります。
値入率の算式は1÷(1−予定粗利益率)なので、例えば粗利益率を30%とする場合は値入率を1.429にします。この値入率を仕入価格の5,000円に乗じた7,145円が販売価格になります。仕入価格÷(1−粗利益率)の算式を利用し、5,000円を0.7で除する計算でも結果は同様です。商売の醍醐味である価格政策はプロでも難易度の高い業務の一つです。価格競争の厳しい時代は時や場所、年齢、性別等の属性で価格変動する一物百価が当然です。
初回の値入に失敗し、売れないからと言った安易な値下げ処分は厳に慎まなければなりません。当初価格で購入されたお客様へお店の利益を余分に負担させ、価格自体に不信感を持たれるので、信用失墜にも影響するからです。とにかく安い価格よりは、これらの属性にマッチした適合価格がネット通販の基本価格政策になります。代表的なコンビニ店は時や場所に適合した価格設定で成功しています。
安いお店の演出方法
お客様に安いお店だと感じられるには、散発的な特売だけでは限界があります。お客様はインターネットを通じて価格の比較を容易にチェックできる環境にあるからです。
粗利益の継続的な確保は価格を心理的、相対的に安いと感じられる演出も必要です。ただし、程度を超えると不信感に転換しますので、くれぐれもご注意ください。
- 端数処理
価格の端数を99円、980円、末尾を統一する
- 商品の差別化
オリジナル商品の開発や類似商品の発掘で価格比較を難しくする
- 小分け、セット化
個数単位のバラ売りや重量単位の量り売り、商品の組み合わせ価格を表示する
- 仕入に応じて流動的な価格を表示する
仕入れが安くできた場合は理由を示し、薄利多売に努める
【例】新商品のキャンペーンや廃番
- 季節物の売価
ハシリは他店より安くし、安いイメージのまま、旬に入ります
- 二重価格札
二つの価格の一方を二重線で消して表示する
- 価格帯を絞り込み、売価の種類を減らす
【例】900円台から9,000円台の7種ある商品を1,000円、3,000円、5,000円台の3種に集約する
- ○○円均一コーナーや売価別の商品コーナーで安さを訴求する
【例】百円、五百円、千円均一ショップの商品は全てが安いわけではありません。
ドロシーレーンの法則
商品別や品目別の粗利益率を顧客の心理効果を利用した適正配分で売上の向上を図ります。顧客は特定少数商品の大幅値下げより、平均的に商品価格を引き下げた方が安いと思い込む傾向があると言う法則です。このように全商品の価格を他店より絶対的に安くする必要はなく、相対的な安さで勝負する方法もあるのです。
- 全体18%の商品を安い価格にすれば、85%の顧客は全商品が安いと思う
- 全体30%の商品を安い価格にすれば、95%の顧客は全商品が安いと思う
- 全体48%の商品を安い価格にすれば、殆どの顧客は全商品が安いと思う
利益と価格の考え方
粗利益率が高いほど儲かると考えるのが一般的ですが、実際は粗利益率が高い商品ほどロスが多く、量的に売れない分野に属する場合が多いのです。この分野の商品回転率は低く、仕入単価も高いので、資金に余裕がないと商品在庫が減少し、品揃え不足や品切れなどによる販売機会の損失が高まることになります。こうなると益々売れないわけですから、資金力の乏しいお店には、出店難易度の高い分野と言えます。
粗利益率と商品回転率とのバランスがとれた商品を取り扱うことが基本です。これを具体的に表す指標に粗利益率×商品回転率で表される
交差比率があります。交差比率の指標は一般的に高額商品や嗜好性の高い商品ほど低くなる傾向があります。
逆に、スーパー、コンビニ店で売られる食品や低額の日用品ほど高くなる傾向があります。平成15年度の中小企業経営指標による小売業平均商品回転率は10.0回、粗利益率40.4%になっています。小売業平均の交差比率は
404%であり、高回転の代表的な飲食料品小売業の指標である1,610%の4分の1程度です。
また、個別商品の売れ行き状況を観察することで、交差比率を高める具体策に次のような方法があります。
- 販売価格を安くすれば量が出るものは少し値入を低めに設定する
- 販売価格を安くしても量が少ししか出ないものは少し値入を高めに設定する
- 販売価格を安くしても量がほとんど出ないものは販売方法を早急に見直しをする
年間売上高
通常は商品回転率=─────────で表します。
年間平均在庫高
四半期間売上高
これを─────────── の3ヶ月で計算すると、よりきめ細かい個別管理が可能です。
四半期平均在庫高
この3ヶ月は春夏秋冬の季節を指しますが、一般に多くの商品は季節と相関関係があるとされています。例えば、気温、伝統行事、旬の食材、祝日等により同一商品でも売れ行きが違うことは広く知られています。
交差比率に商品別の売上比率を乗じたものに商品別利益貢献度があります。これは交差比率優先の品揃えだけでなく、売上全体に占める個別商品の売上割合も考慮します。
商品は相互に関連し、比較や相乗効果があって売れている場合があります。そのため、突然消えたりすると、その後の売上に影響することがあるので、注意が必要です。
価格設定と粗利益額
【事例】商品の仕入価格5,000円、販売予定数量200個の商品を販売する場合
| A.販売消化率(%) |
50 |
25 |
15 |
8 |
2 |
100% |
| B.設定値引率(%) |
0 |
20 |
30 |
50 |
80 |
- |
| C.設定粗利益率(%) |
40.0 |
25.0 |
14.3 |
-20.0 |
-200.0 |
- |
| D.予定販売数量 |
100 |
50 |
30 |
16 |
4 |
200個 |
| E.予定販売価格 |
8,333 |
6,666 |
5,833 |
4,167 |
1,667 |
- |
| F.予定売上金額 |
833,300 |
333,300 |
174,990 |
66,672 |
6,668 |
1,414,930 |
| G.予定粗利益額 |
333,320 |
83,300 |
24,990 |
▲13,328 |
▲13,332 |
414,950 |
| H.累積粗利益率(%) |
40.0 |
35.7 |
32.9 |
30.4 |
29.3 |
- |
一定期間内に初期設定の8,333円で全部が販売できた場合、8,333円×200個の売上が期待できます。季節商品や流行商品などは早期完売が必要なので、売れ足や時期を見ながら値下げするのが一般的です。この場合は当初の期待利益が確保できなくなるので、事前に販売計画を立案して置く必要があります。
一般に値引率と販売数はある程度まで正比例すると言われます。上記の例は200個の50%相当の100個が売れた時点で20%値下げし、6,666円で50個の販売を計画しています。この場合は最終的に80%引きで最後の4個を完売するので、売上を1,414,930円に予定しています。この結果、商品の平均粗利益率が約29.3%なので、414,950円の粗利益が確保されます。仕入数量200個の10%が赤字販売なのに対し、当初粗利益率の約10%低下で完売できることになります。最初から10%引きの粗利益率30%で販売すると販促効果の高い値下げを期間中に実施できなくなります。完売できる可能性がより少なくなると考えられるわけです。このように販売消化率と値引率との関係を理解する必要があります。
また、高い粗利益率を設定できる商品だけでなく、初期販売消化率の高い商品に注目するべきでしょう。それには、少なくとも50%以上を目標とした売れ筋商品の確保がポイントになります。特にファションや流行性、季節等のある商品などのライフサイクルが比較的短い場合は注意が必要です。
この場合、見切りが利益を左右する販売価格と販売消化率及び価格弾力性の相関をチェックします。お客様の期待価格を著しく下回る値引きで赤字を増やすことも得策ではありません。価格の変動が売上に及ぼす影響度を示す価格弾力性の検証が必要です。
価格弾力性
需要の変化率 S1−S2 P1+P2
価格弾力性|α|=───────=────×────で表します。
価格の変化率 S1+S2 P1−P2
【例】5,000円(仕入2,500円)で100個販売可能な商品の同額粗利益に必要な販売個数
| 売価 |
3,000 |
3,500 |
4,000 |
5,000 |
5,500 |
6,000 |
6,500 |
| 販売数 |
200 |
180 |
160 |
100 |
91 |
50 |
20 |
| 粗利益 |
100,000 |
180,000 |
240,000 |
250,000 |
273,000 |
175,000 |
80,000 |
| 必要数 |
500 |
250 |
167 |
100 |
84 |
72 |
63 |
| 弾力性 |
1.33 |
1.62 |
2.08 |
- |
0.99 |
3.67 |
5.11 |
事例では、5,500円の価格弾力性が
1.0以下で、価格変動による販売数は余り影響を受けません。また、値引きの場合は4,000円の設定が販売数に最も大きく影響を及ぼしていることが分ります。この結果、利益重視の場合に500円の値上げを図り、数量重視の場合は4,000円が最も効率的です。
価格弾力性<1の場合
日用品や必需品等に多いこのタイプの値下げは価格が下がる比率よりも小さい比率でしか、販売個数は増加しないので、
売上は減少します。また、値上げは価格が上がる比率よりも小さい比率でしか、販売個数が減少しないので、売上は増加します。
価格弾力性>1の場合
奢侈品や嗜好品等に多いこのタイプの値下げは価格が下がる比率よりも大きい比率で販売個数は増加するので、売上は増加します。また、値上げすると価格が上がる比率よりも大きい比率で販売個数が減少するので、売上は減少します。
この価格弾力性は商品の種類や人気だけでなく、社会現象や客層の購買傾向によっても影響されます。どの商品をいくら値下げすると販売数が伸びるのか、しっかりと見極める必要があります。
売価利益率と原価利益率
50%の利益入りだから50%の値引をしても損はないなどと思い込んでいる人がいます。これは売価利益率と原価利益率とを混同しているので要注意です。通常の場合、利益率は売価を分母にして計算します。
例えば値入率を1.5とした場合、50%の利益が確保されたと思い違いすることがあります。これは原価5,000円だと売価10,000円が売価基準利益率の50%に相当します。原価基準売価は7,500円なので、原価基準利益率の50%は売価基準利益率の33.3%に相当します。
値引きの対策法
値引き要求されることは、ほとんどないと思いますが、メール等でのお問合せは次の点に注意します。この場合はお問合せのメールを契機に次回の購買機会に繋がるよう丁寧な応対が得策です。最初にお問合せのメールの内容は価格だけでなく、商品をどれ位気に入っているのかの見極めが大切です。値引きできない旨の表示はお店の雰囲気が冷たくなるので、事実であってもお薦めできません。
- 初期設定の販売価格は安易に付け替えしない
- ○○なので、ご容赦願います(とてもご無理なご注文です)等の理由を説明し、丁寧な即答を心がける
- 根拠もなく、価格が高いとの言い分は鵜呑みにしない
- 値引き交渉は先に価格を聞き出し、妥協点を探りながら、こちらも簡単な条件を提示します。そうすると、お客様は対等に交渉した満足感(お買い得感)が得られます
- 価格以外の条件で対応し、バーゲンセールの予定があれば、これをお知らせする
値引きの方法
値引きはクーポンを臨機応変に組合せて利用すると効果があります。クーポンは一般に次のようなプレゼントや割引き、無料などのサービス優待券として広く発行されています。クーポンの内容次第では、値引きや無料サービスに対応できる便利なシステムです。
- 指定商品50円値引き、指定商品10%値引きなどの個別値引券として発行
- 一定額以上に購買額の5%値引き、曜日指定の5%値引き等の総額値引券として発行
- 送料、ラッピング、振込手数料、粗品等の無料券として発行
その他、次回のお買い上げ以降に利用できるクーポン、一定回数や一定額以上の購買客に限定したクーポン等と、アイデア次第で工夫できる余地がありますが、有効期限と条件の記載は必須です。一般的な値引きには、次のような方法がありますが、価格不信を招かないようやり過ぎにご注意下さい。
- 購買商品の個別価格から値引きする方法
お試し値引き、バンドル値引き、理由あり値引き、在庫処分値引き、限定値引き等
- 購買商品の総額から値引きする方法
会員値引き、ポイント還元値引き、抽選値引き、量販値引き、記念日値引き等
- 共同購入商品の数量によって値引きする方法
共同購入者の全員を対象に量販値引き販売するネットプライスが代表的です。
中でも、抽選値引きは特に訴求力が高く、インパクトのある方法として注目を浴びています。例えば、20人に1人が無料となるキャンペーンは10人に1人を50%引きとしたのと同じ値引き幅です。これは、全品5%値引きと同じ効果ですが、話題性や訴求の効力が全然違います。一部の家電量販チェーン店や航空会社が採用した実績があります。
【例1】キャンペーン前の客単価5,000円で客数80人、キャンペーンに変動のない場合
- 全品5%値引きの場合
売上は5,000円×(1−5%)×80人の380,000円
- 無料キャンペーンの場合
4人が無料なので、売上は5,000円×(80−4)人の380,000円になります。これは、キャンペーン前の売上400,000円の5%引きに相当します。
- 50%OFFキャンペーンの場合
8人が50%引きなので、売上は5,000円×(80−8)人+5,000円×(1−50%)×8人の380,000円になります。こちらも、キャンペーン前の売上の5%引きに相当します。
【例2】キャンペーン効果が客単価50%増の7,500円で客数120人となった場合
- 無料キャンペーンの場合
6人が無料なので、売上は7,500円×(120−6)人の855,000円
粗利益額は855,000円×40%の342,000円になります。
- 50%OFFキャンペーンの場合
12人が50%引きなので、売上は7,500円×(120−12)人+7,500円×(1−50%)×12人の855,000円になります。
同じコストで方法を変えれば、客数だけではなく、客単価の増収効果が期待できます。ネット通販でも簡単なJava ScriptやCGIを利用した電子おみくじでの抽選は可能です。
例えば、Web上で作動する電子おみくじの
LUCKYはCGI単独で動作し、SSI連携との応用も多彩です。ただし、当選者を掲示板で公開するにしても実際に無料となったかどうかを第三者は検証できませんので、当面は登録会員制ショップでの利用が考えられます。
目標売上高の設定
一般的に売上高=
客単価×客数によるものとされています。つまり、売上高の増加には、客単価や客数のいずれか、又は両方を増大させることが必要です。この客数は新規客以外のリピーターが含まれるので、正確には延べ客数と考えるべきです。
この延べ客数はネットショップにとって、極めて重要な概念です。月間売上は(客単価×客数)+(リピーター単価×リピーター数×月間購買頻度)と考えられます。
つまり、延べ客数に占めるリピーター割合を高めることで、中核となる売上の確保が可能になります。
目標利益の確保に必要な売上高
目標利益の確保に必要な売上高は損益分岐点の算出を応用します。(
Excel版)
固定費+目標利益
損益分岐点= ─────────
1−変動比率
・
固定費は売上の増減に関係なく支払う費用
・
変動費は売上の増減に比例して変動する費用
変動比率は変動費÷売上高で計算しますが、売上原価率を使用する簡便法もあります。変動費決定の最大要素は仕入原価なので、変動費率が低いほど利幅が大きくなります。
【事例】
・月間売上額100万円(平均客単価5千円、注文客数200人)
・仕入原価65万円(前月末商品在庫高+月間純仕入高−当月末商品在庫高)、梱包料200円
・固定費(サーバー料金5千円、インターネット関連通信費1万円、アルバイト代15万円)
・目標利益20万円(借入返済元金を含む)
16.5万円+20万円
損益分岐点= ─────────── =約117.7万円
65万+@200×200人
1− ─────────
100万円
この結果、目標利益の20万円を達成するには、最低117万7千円の月間売上が必要です。
製造業又は卸売業の販売与信設定
販売先が固定しているような場合でも、無理な売上増進は好ましいものではありません。そのため、請求締切日から現金化する期間(平均回収サイト)が契約どおりで、特に不安がなければ、次のような比例算式で簡単な与信管理ができます。
今期年間販売目標額×前期債権総額最大値
今期与信限度額= ────────────────────
前期販売実績額
目標アクセス数の設定
目標利益を達成するためには、損益分岐点を上回るだけの売上を確保しなければなりません。そのために必要となるのが「
コンバージョン件数」と「アクセス件数」です。
この場合、最低の目標月間成約件数は損益分岐点÷平均客単価なので、126万2千円 ÷ 5千円の253件です。成約件数はアクセス件数と相関するので、アクセス解析から
成約率を求めます。この成約率は商材によって違いがあります。優良店で3%以上が多い実態から、事業継続が可能な最低1%以上を目標とします。
仮に1%とした場合、目標アクセス数は目標成約件数÷成約率(253件÷0.01)の25,300アクセスになります。つまり、一日平均844アクセスが必要とされるわけです。
しかし、開業直後からこのようなアクセスを毎日確保することは現実的ではありませんので、成約率の高いリピーターの確保対策が重要になります。
ネット通販のマーケティングミックス
目標達成のポイントは客単価を上げ、リピーターを増やす次の方法を最適に組合わせることにあります。
- Product(商品)
・売れる商材の確保
・商材価値の差別化
・プラスワンのサービス提供
- Price(価格)
・粗利益率を上げる
・支払方法の効率化
- Promotion(販促)
・SEO対策の実行
・広告宣伝活動(P4P、パブリシティ広告、メルマガ、クチコミ情報の活用等)
- Place(販路)
・ドロップシッピングの活用
・アフィリエイトの活用