膨大なデータの中から有用な情報や法則性を採掘し、マーケティングに活用する分析手法ですが、有名な事例に世界最大の小売業であるウォルマートの調査があります。
顧客ごとの購買データをコンピュータで分析し、来店客はどういう組み合わせで買物するのか、商品ごとの関連性を調べた結果、パンとバター、ステーキ肉とソースの関連性が高いのは、事前に予想されたことであるのに対し、日曜日の午後5時から7時の間、紙オムツと缶ビールが同時に買われる割合が不自然に高かったので、同じ場所に並べて置いたところ、商品の売上が伸びたとの伝説が由来になっているようです。
従来から、関連商品を一ヶ所にまとめて陳列する手法はありましたが、このような組み合せ例は無作為のデータ分析がなければ、不可能なことから、脚光を浴びることになりました。データの蓄積が前提条件のデータマイニングはパソコンとソフトのアルゴリズムなどの進化により、データベースの構築は比較的容易となりましたが、データ解析は統計知識と仮説を検証するスキルが必要です。
ネット販売の利点のひとつに、お客様と直接やりとりできる生の情報を収集できることにあります。この点を実際の販売にどう活かせるかが、繁盛店になるためのノウハウとされますが、集めた購買データは次の3つの視点から活用します。
- 次回以降のリピータ顧客への情報提供素材
- 自店のお客様が本当に求めているニーズを確認する
- 取扱商品やサイトの改良、絞り込み、新製品や新サービスの開発ヒント
データ収集
商品を販売することで、自動的に次のようなデータを収集できます。
- 誰が(氏名・電話番号・メールアドレス)
- いつ(注文月日)
- どの時間帯に(注文時刻)
- どの地域から(注文者の住所)
- どんな目的で(贈答・自家消費)
- どの商品を(商品名・色柄・サイズ)
- どれだけの数量を(注文数)
- いくらで購入した(購入金額)
さらに、購入商品のアンケートを実施すると、これらのデータと併せ
データベースソフトの集計クエリやExcelのクロス集計などで分類、分析し、今後のマーケティング活動に活用できるので、本格的な店舗運営にデータベースソフトの導入が不可欠です。
数値分析
ネットビジネスは実店舗以上のデータを収集できるのが特徴です。データの収集によって求められる売れ筋商品、利益貢献度、客単価、購買頻度、顧客満足度などを分析し、数値データ化することで、顧客ニーズに適合した商品やサービスの提供と信頼関係を構築することが可能になり、
ロイヤルカスタマーの育成につながります。
データベースに蓄積した顧客の購買履歴を直近の注文日が近く、購買回数が多く、購買金額が高い程、次回の購買確率が高まる傾向があるという考え方で分析したものにRFM分析があります。このような優良顧客を的確に見極め、集中的にサービスを提供すれば、資金や人などの経営資源や時間の有効活用につながり、結果的に利益の改善が図れます。
RFM分析
お客様の過去注文履歴をポイント化したものですが、業種や業態により購買特性があり、一律に判断できません。お店の実情に併せてウェートを付加することが大切です。
- Rはリセンシー(最新購買日)
- Fはフリークエンシー(一定期間内の購買頻度)
- Mはマネタリー(購買累計額)
【マトリクスセル法の事例】
| ランク |
R |
F |
M |
| 1 |
1ヶ月以内 |
10回以上 |
50,000円以上 |
| 2 |
2ヶ月以内 |
5〜9回 |
25,000円以上 |
| 3 |
3ヶ月以内 |
2〜4回 |
10,000円以下 |
従来の売上=顧客数×顧客単価を
売上=顧客数×商品単価×購入個数×購入頻度に分解して、理解することがRFM分析の考え方です。
最新購買日(R)
購入後の日数があまり経過していないということは、お店や商品の記憶がしっかり残っているということで、販促活動を行う場合、既に記憶に残っていない顧客よりも、高い効果が期待できます。これは、リピート確率の高い顧客を選別することになります。
- Rが今日に近いほど、再購入する傾向が高くなる
- Mが高くてもRが過去になればなるほど、再購入の傾向が低くなる
- Fが多くてもRが過去になればなるほど、再購入の傾向は低くなる
購買頻度(F)
Fの低い顧客が多い場合、顧客満足度が低いと考えられます。一方、Fの高い顧客が多い場合はリピータ客が多く、逆に、Fの低い顧客が少ない場合は新規客が少ないことを意味するので、これは、顧客との新密度を計る指標にも利用できます。
- Rが同じならFが多いほど、再購入の傾向が高くなる
- Rが過去になればなるほど、Fが多くても再購入の傾向は小さくなる
- Mが高くてもFが少ないほど、再購入の傾向は少なくなる
購買累計額(M)
Mのランクが高いということは、潜在的な購買力が高いことを意味します。このような顧客が多く、しかもFやRの数値が上がれば収益が確実に増大するからです。これは、お店の信頼度に対する顧客のロイヤルティーを計る指標にもなります。
RFMの分析手法
- Mの多い少ないによって再購入は判断できない
- 再購入の判断は先にR、次にFで判断できる
- Mが高い場合、一般に購買力があると判断できるが、最購入するとは限らない
- Rのランクが高いほど購入額の大きい顧客が属していることを示す
- Rのランクは収益面からも重要であるが、一般的に次のことが言われる
・Rのランクが高いほど将来の企業収益に貢献してくれる可能性が高い
・Rのランクが低ければFやMのランクが高くても他店に奪われてる可能性が高い
・Rのランクが同程度ならFのランクが高いほど常連客である
・Rのランクが同程度ならFやMのランクが高いほど購買力がある
・RやFのランクが高くてもMが少なければ、購買力が低い
・Fのランクが低くMが高ければ、Rの高いほうが良い
・Fのランクが上がらず、下がっている場合は他店に流れてる可能性が高い
・RFMの全てが低い場合は切り捨てを検討する
このようにRFM分析で最も重要なのはRであり、FやMが高くても最近購買実績がない顧客は既に競合店に奪われてしまっている可能性が高いと考えられます。つまり、Rの動きが各顧客の動向を把握する上で重要であり、Rのランクが下がり始めた段階で、適切な販促活動を行えば他店に奪われないかも知れないのです。
Fが伸びない場合も同様です。Mのランクが低い場合はFに注目する必要があります。このFが低いランクの場合は潜在購買力が低いと考えられるため、将来的な収益貢献度も低いと考えられます。また、Fのランクが低く、Mのランクが高い場合は購買力が高いと考えられ、購買頻度を高める企画を実施すれば、効果が期待できます。
顧客が自店の顧客である期間にどれだけの利益をもたらすのかを数値化したものをLTVと言います。新規の顧客を獲得し、その顧客がお店で購買可能な期間に自店でいくら購入していただけるかを算出することで、顧客の新規獲得や顧客維持のためにいくら投資できるかの根拠となる指標にも利用します。
- 既存顧客のうち売上累計の上位を占める上位客が年間で平均何個、単価いくらで合計いくら買ってくれているのか
- お買い得商品、新商品を最初に訴求すべき顧客はこの上位客であるが、継続的に自店の顧客として維持していくためにはどうしたらよいのか
一般に維持率向上のノウハウや新規客獲得のための費用は既存客を維持する費用の5倍を要すると言われますが、次の点を検討する必要があります。
- 顧客が自店の顧客でいてくれる期間がどれくらいか
- 登録日からどれくらいの期間、買い続けてくれるのか
- 新規客獲得のための費用は3年間の累積粗利益の何%にするか
- 維持費用は何%にするか、上位顧客と通常客にどれだけの違いをだすか
LTV分析の活用法
- RFMとLTVの複合分析
LTVの最大化(早期化)には、販促活動やカタログの無駄な配付を停止しなければなりませんが、無駄な顧客をRFM分析だけで決めると、効率が上がっても全体の売上がジリ貧となるので、可能性のある顧客のみを取捨選択する必要があります。
【事例】
・折込チラシは獲得顧客数が少なく、初期獲得コストも高い。
・カタログやメールなど請求する顧客は購買意欲が高く、初期獲得コストも低い。
- LTV最大化の方策
・初期獲得コストの低減するため、販促活動を見直し、再検討する
・顧客にコストを集中し、個別顧客の価値を高め、他店への流出を阻止する
・お店に対するロイヤルティを高め、リピター(ファン)を育成する
フリークエンシー・マーケティングやフリークエンシー・マーケティング・プログラムと同意語ですが、1981年にアメリカン・エアラインが始めたサービスで、1マイル飛ぶごとに1ポイントを与え、あるポイントに達したら無料チケットなどを提供したり、ビジネスクラスへのグレードアップをしたりするフリークエント・フライヤー・プログラムが最初だと言われています。後にホテル業のフリークエント・ステイ・プログラムやレンタカー、小売業などのフリークエント・ショッパー・プログラムへと波及したようです。
日本のFSPは購入金額一定額(例えば100円当たり)に対し、ポイント(100円1ポイント、1ポイント1円)を提供する場合が多く、ポイントは顧客の申し出により、商品券や割引券に交換されますが、米国はポイントよりも会員特別価格で購入できるサービス・プログラムになっている場合が多いようです。つまり、買えば買うほどお得になるプログラムを考案し、顧客の継続購買と購買額の増大を促すマーケティング手法で、購入客全体にサービスするのではなく、頻繁に購入する顧客に対してのみ、特別のサービスが提供されます。
【事例】そごうのミレニアムカード会員・シティ銀行のシティゴールドプログラム
FSPの要約
- 優良顧客(ロイヤルカスタマー)を増やし、継続的に自店を利用してもらう
- 顧客を購入金額や来店頻度によって細分化する
- より多くの利益を生み出す優良顧客を引き止める
- 一般顧客に対し、よりランクの高い優良顧客になるよう育成する
- ワーストランクの顧客(バーゲンハンターやクレーマー)に販促コストをかけない
- お店の利益(金銭以外を含む)を越える顧客は積極的に他店をお勧めする