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法人成りの目的と効果

個人企業が法人を設立することを「法人成り」と言います。この法人成りは取引や信用、節税の面から検討される場合が多いようです。

目的

一般的には、ある程度の利益が確保できるようになると、節税対策を意識するようになります。節税目的を主眼に置いた法人成りは企業の社会的責任を果たす覚悟が希薄になる懸念があります。消費者や従業員、株主及び取引先などに対する永続的な企業活動を通じた社会貢献と言う責務です。自己の経済的な都合のみで検討すべきではなく、しっかりした目的意識が必要とされるので、常時使用する従業員が家族及びパートを含め5人以上の規模となってから検討すべきでしょう。この規模から更に一段と飛躍拡大するには、人材確保や金融面での環境整備が必要とされるからです。

効果

会社を設立すると、個人の課税対象となっていた事業所得が役員報酬という給与所得になります。そこから最低でも65万円の給与所得控除を差し引くことで、その分が節税対象になるとされています。役員報酬や臨時給与は過大でない場合、定時株主総会取締役会の議決を経ることで損金算入が認められます。
  • 業務内容
  • 法人の収益
  • 使用人に対する給与の状況
  • その法人と同種同規模の事業を営む法人役員の報酬など

ただし、特殊支配同族会社の社長報酬は給与所得控除相当分が法人所得の損金に算入されません。同族関係者で株式の90%以上を保有し、常時業務に従事する役員が過半を占める会社がこれに該当します。なお、適用除外になる場合は次のとおりです。

  • 基準期間所得が1,600万円以下の場合
  • 基準期間の所得が3,000万円以下で社長報酬の占める比率が1/2以下の場合
以上の観点から総合的に判断し、事前の定めに基づき確定時期に確定額を支給する年2回のボーナスなどを含む役員給与は損金に算入することができます。役員報酬の支給後に会社の資金繰りのため、報酬額の多くは会社へ一時的に貸付ける実態が多いのです。
役員報酬の変更は税務署だけでなく、健康保険や厚生年金の保険料に影響しますので、社会保険事務所に個別役員の報酬額を決した総会などの議事録写しの提示が必要です。
法人類型と設立費用

会社類型の比較

会社類型 特例有限会社 株式会社 合同会社
最低資本 300万円以上 1円以上
株主責任 出資額以内の有限責任
株主数 株主1名以上 株主1名以上 出資者1名以上
役員数 取締役1名以上 取締役1名以上 任意設置
監査役 任意設置 中小会社の株式譲渡制限会社は任意設置 任意設置
取締役会 任意設置 中小会社の株式譲渡制限会社は任意設置 任意設置
役員任期 任期なし 原則は取締役2年、監査役4年。株式譲渡制限の定款がある場合は最長10年 任意
その他 貸借対照表の公告不要 ウェブサイトの貸借対照表は5年間継続公開 財務諸表は開示義務
■商法特例法の中小会社は資本額5億円未満又は貸借対照表の負債総額200億円未満の会社
■みなし大会社は資本額1億円超の株式法人で定款に特例適用を受ける旨を定めた会社
純資産額が300万円未満の場合は剰余金があっても株主への配当はできません。
■ウェブサイトによる開示(会社法施行規則218条)

事業報告における記載事項の一部、株主総会参考書類における記載事項の一部、注記表及び連結計算書類の全部については、ウェブサイトに開示することで、書面による提供を省略することができます。新会社法は社員1名のみの合名又は合名会社の設立や存続を認めています。法人が合名や合資会社の無限責任社員となることも認め、これらの設立などが容易になっています。また、合同会社の社員の持分譲渡は他の社員全員の合意が必要ですが、詳細は会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについてをご覧ください。

類似商号規制の廃止

他人が登記した同一市町村内の商号は類似の会社名を排除するため、同種の営業での登記を禁止していましたが、これが廃止され、「会社の目的」となる営業内容が柔軟に記載できます。商号と本店所在地とが同一でなければ、商号が既存の会社と同一又は類似であっても、登記は可能です。

設立費用

費用 株式会社 合同会社 備考
収入印紙 4万円 公証役場
定款認証
手数料
5万円
謄本手数料 250円/枚×枚数(標準的な定款5枚の場合、250円×5枚の1,250円)
出資金払込
委託手数料
発起設立の場合、払込金保管証明不要(残高証明は必要) 金融機関
登録免許税 出資金×7/1,000(最低15万円) 出資金×7/1,000(最低6万円) 広島法務局
登記簿謄本 証紙1,000円×2通
印鑑証明書 証紙500円/通
合計 243,750円 153,750円 -
■現物出資などの財産価格が500万円以下の場合、検査役の調査は不要です。

電子定款

原始定款をPDFファイルに変換・電子署名し、FDに記録した電子文書の定款原本を電子定款と言います。法人設立後に電子認証を利用するには、商業登記制度に基礎を置く電子認証制度に基づいた電子証明書の取得や電子認証ソフト、PDF化と電子署名ができるAdobe Acrobatなどの購入が必要です。また、指定公証人は電子認証した電子定款と同一内容であることを証する定款謄本を発行します。この電子認証はインターネット経由で指定公証人が電子署名し、電子確定日を付与すること指します。

商業法人オンライン登記申請制度

広島県内で商業法人のオンライン登記申請ができるのは、広島市域を管轄する広島法務局だけです。オンライン申請を行う場合は住民基本台帳カードを事前に取得し、公的個人認証サービスによる電子証明に対応するICカードリーダライタの購入が必要です。
法務省オンライン申請システムのページにある登記申請書作成ソフトを申請人等のパソコンにダウンロードすることで、オンライン登記申請に必要な所定の会社登記申請用様式が取得できます。商業法人登記の添付書面が電磁化されていない場合は従来の書面による登記申請も引き続き可能ですが、添付書面に申請番号を記載する必要があります。
合同会社(LLC)と有限責任事業組合(LLP)

合同会社の特徴

有限会社と混同されやすい名称の有限責任会社を商法では、合同会社と呼びます。
  • 出資者は出資額の範囲内での有限責任があり、財務諸表を債権者に開示するなどの規制があります。
  • 取締役会や監査役のような機関を設置する必要がありません。
  • 意思決定や利益の分配方法は出資金額の比率に拘束されずに、任意の定めができる組合方式です。
  • 社員の入社や持分譲渡、会社成立後の定款変更は社員全員の同意が原則必要です。
  • 各社員は原則的に業務執行権限を有しますが、定款で一部社員のみに限定することも可能です。
  • LLCは他の法人同様にLLC自体が課税され、社員となる出資者はLLCから配当や報酬、給料を受け取ることができます。

有限責任事業組合の特徴

経産省所管の有限責任事業組合は法人格のない民法組合の特例として制度化されました。共同の営利目的事業を営む組合契約を定めた「有限責任事業組合契約に関する法律」が根拠法です。欧米で認知度の高いLLPは新規創業や創造的な連携共同事業の促進効果が期待されます。(活動分野例)
  • 構成員全員が有限責任の組合ですが、財務諸表を債権者に開示の義務があります。
    組合員は出資額の範囲内で責任を負い、事業リスクが限定されるので、事業に参加しやすく、組合員全員へ業務執行の参加を義務付ける規定が導入されています。
  • 組合員同士の合意で損益や権限の分配を自由に決めることができます。
    組合員の労務や知的財産、ノウハウの提供などを考慮し、出資比率と異なる利益分配が可能です。
  • 構成員課税の適用が受けられます。
    LLP自体に課税されず、出資者に直接課税されます。LLPの事業で損失が生じた場合は一定額の範囲内で出資者の他の所得と損益通算ができます。
    組合員はLLPから配当を受け取れても報酬や給料を受け取ることはできません。

LLPの運営基盤を定めるLLP契約の登記には、契約原本と出資の払い込みを証明する書面と各組合員の印鑑証明などをLLPの事務所所在地を所管する法務局へ持参します。LLP契約登記の登録免許税6万円と登録申請書類の審査に要する10日前後の期間が必要です。
詳細は経産省の有限責任事業組合制度の創設についてLLPに関する40の質問と40の答えをご覧ください。なお、起業時にLLCかLLPを選択する際、立ち上げ事業が本業であれば、安定した報酬を得られるLLCを選び、反対に本業と別の共同プロジェクトである場合、課税上で有利なLLPを選択するのが一般的です。

法人税と法人住民税

法人税率

平成14年4月1日以後開始事業年度 資本金1億円以下 資本金1億円超
所得金額が年800万以下の部分 22% 30%
所得金額が年800万超の部分  30%

同族会社の留保金課税

資本金又は出資の額が1億円以下の同族会社は適用対象外です。同族会社とは、株主を親族などの同族関係者を含めたグループで判断し、その同族関係者を含めた株主3人以下の持株合計が資本金の50%を超える会社を指します。
留保金課税額=〔所得−(配当+法人税等)−留保控除額〕×特別税率
■留保控除額(下記の内、最も多い金額)
  1. 所得基準額が所得等の金額×50%(資本金1億円以上の法人は40%適用)
  2. 定額基準額が年2,000万円
  3. 積立金基準額が期末資本金の25%相当額−期末利益積立金
  4. 自己資本比率30%到達までの額(資本金1億円以下の法人)
課税留保金額3,000万円以下 10%
3,000万超1億以下 15%
1億超 20%
■中小企業新事業活動促進法の経営革新計画承認企業は留保金課税が不適用とされます。

法人住民税率

法人の住民税には均等割と法人税割とがあります。均等割は法人所得の有無にかかわらず、資本などの金額や従業者数によって税額が定められています。また、法人税割は国税である法人税額を課税標準として計算されます。
市県民税 広島市 広島県
法人税割 課税標準の法人税額×税率 12.3% 課税標準の法人税額×税率
法人税額が年1,000万円以下
5.0%
資本金1億円以上で課税標準の法人税額が年240万円以上の適用率 14.7% 資本金2千万円以上で課税標準の法人税額が年1千万円以上の適用率 5.8%
均等割 資本等が1千万円超1億円以下、従業者数の合計50人以下 130,000円 資本等が1千万円超え1億円以下、ひろしま森づくり県民税2,500円含む 52,500円
資本等の金額1,000万円以下、従業者数の合計50人以下 50,000円 資本等の金額1,000万円以下、ひろしま森づくり県民税10,000円含む 21,000円
■資本等の金額は資本金額又は出資金額に資本積立金額又は連結個別資本積立金額を加えたものです。
■従業者数の合計数は区内にある事務所、事業所等の従業者数の合計数です。
■法人市民税の均等割は事業所等を設置していた月数÷12月×税額の月割計算です。

法人事業税率

県税の法人事業税は課税標準となる法人所得額区分に応じて次の税率が適用されますが、資本金が1億円以上の法人は別途に外形標準課税の対象となります。
普通法人 法人所得の区分等 税率
所得のうち年400万円以下の金額 5.0%
所得のうち年400万円を超え年800万円以下の金額 7.3%
所得のうち年800万円を超える金額及び清算所得 9.6%
法人所得に対する法人税等の最低割合は30.806%(22%+22%×(12.3%+5%)+5%)+71,000円ですが、この内の5.0%に相当する法人事業税は損金算入できるので、法人の最低実効税率は次のとおりです。

      法人税率+(法人税率×法人住民税率)+法人事業税率
実効税率=─────────────────────────≒0.29339=29.3%
             1+法人事業税率

法人設立後の届出

税務署

設立する法人が連結子法人や合併等でなく新規である場合、次の届出書を提出します。
■法人設立届出書(設立の日以後2ヶ月以内)
この法人設立届出書には、次の書類を添付することになっています。
  1. 定款等の写し
  2. 設立登記の登記簿謄本(法務局が電子情報処理の場合は履歴事項全部証明書)
  3. 株主等の名簿の写し
  4. 設立趣意書
  5. 設立時の貸借対照表
■給与支払事務所等の開設届出書(事務所などを開設した日から1ヶ月以内)
給与などの支給人員が常時10人未満の場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し、年2回に分割して源泉所得税を納付することができます。
■消費税関係の届出書(消費税の各種届出書を参照)
必要があるときは、次の申請書や届出書を提出することができます。
  • 青色申告承認申請書(設立以後3ヶ月の経過日と第1期事業年度終了日とのいずれか早い日の前日まで)
  • 減価償却資産の償却方法届出書(設立第1期事業年度の確定申告書の提出期限まで)
  • 棚卸資産の評価方法の届出書(設立第1期の事業年度の確定申告書の提出期限まで)
これらの届出書類の様式は国税庁ホームページからダウンロードできます。

県及び市又は町への届出

市県民税 法人市民税 法人県民税
提出書類 法人等の設立・設置申告書
定款の写し
商業(法人)登記簿謄本
法人設立・設置届書
定款の写し
商業(法人)登記簿謄本
提出先 市役所、町役場 広島県の地域事務所税務局
届出期限 法人設立日から1ヶ月以内 法人設立日から5日以内
社会保険及び労働保険の成立届

社会保険

従業員だけではなく、役員でも常勤の場合は原則的に社会保険の被保険者になります。そのため、社会保険事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を添付書類と同時に提出します。パートさんも通常勤務の4分の3以上の時間であれば加入義務が生じます。

労働保険

  1. 労働保険役員等以外の従業員を一人でも雇用すると所轄の労働基準監督署へ「労働保険関係成立届及び労働保険概算保険料申告書」などを提出し、保険料の概算申告と納付が必要です。

    役員等が労災に加入するには、労働保険事務組合に事務委託することで特別加入ができます。その他、労働保険料の金額にかかわらず、分割納付が認められる特典もあります。委託手数料が比較的低廉な事務組合に事業協同組合、商工会議所、商工会などが利用できます。

  2. 雇用保険は所轄の公共職業安定所へ「労働保険関係成立届控及び雇用保険資格取得届」などを添付し、「雇用保険適用事業所設置届」を提出します。所定労働時間が週20時間以上、且つ、一年以上の雇用見込みのあるパートは強制加入です。
これらの届出は添付書類の関係上、労災保険、雇用保険、社会保険の順になります。
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